2019/03/05 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.23 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 「ねえねえ、スペインって物価安いの?」 「家族四人、どれぐらいで食べていけるの?」 などなど、質問されることがあります。うううん、難しい質問ですね。 物価、安いの? 高いの?まず、IVA (Impuesto sobre el Valor Añadido、付加価値税)と呼ばれる、消費税のような税金が 21 パーセントのスペインは、決して物価が安いイメージではありません。もちろん、日常の食料品、医療品などには 21 パーセントはかからず、10%、4% と、品目によって課税のパーセンテージは変わって来ます。日本で 10 月から施行される、と言われている 10% の消費税が、持ち帰りかその場で食べるかによって変わる、という件が話し合われていますが、スペインの税金もそれなりにややこしいのが実情です。 ただ、スーパーなどでの表記は、内税が多く、すでに税金を加えた額が表示されているのが普通です。たいていの場合、払った数パーセントかの税金は、よほどのことがない限り、戻ってくることはないので、税金は、安ければ安いほど、ありがたいのは庶民の気持ちですよね。 そんな中、スペイン人たちはどう過ごしているのか、と興味が湧くことと思いますが、基本的な物の価格は、そんなに高くないのが実情です。例えば、毎日食べるパンやお米、どれぐらいなのでしょう? 気になりますよね。 それが、この写真です。 今、1€ が 126 円ほどなので、大体の価格がつかめると思います。 対面方式から、自分で取る形になりつつあるスーパーのパン売り場。 朝、昼、晩と何かと食べるものだから、価格もお財布に優しい(写真協力 © Salvador Barrau Viñas)左:スーパーのフラスンパン一本、約 250 グラムが 0.55 ユーロ = 70 円ほど。 毎日食べるものだから(写真協力 © Salvador Barrau Viñas) 右:こだわりのあるパン屋さんでは、パブェ(敷石型のパン)、パジェス(田舎パン)などもある。 価格は若干上がる(写真協力 © Salvador Barrau Viñas)スペインでは、「バーラ(Barra)」と一般的に呼ばれる長細のフランスパンが主食で、朝食ではトーストにし、昼食、夕食ではメインディシュとともに欠かせず、そしてお弁当として持ち運ぶ Bocadillo(ボカディーリョ)もこのパンを使いますので、その消費量は日本の比ではありませんね。おのずと、価格競争も起こるわけです。 では、それ以外の主食、お米はどうでしょうか? パエリアという、バレンシア発祥のお米料理が有名ですし、それ以外にもサラダに入れたり、メインデッシュの付け合わせになったり、また、Arroz con leche(アロス・コン・レチェ、お米とミルクの意味。日本ではミルクがゆ、ライスプディング)というデザートにもなる、生活に密着したものですね。 ただ、スペインでは白米をお茶碗に入れて食べるスタイルはないので、「新米が美味しい」というコンセプトもあまりありません。白いご飯は大抵肉や魚のソースと混ぜられたり、醤油を直接白いご飯にかけて食べる、という、ちょっと驚きの食べ方をする人もいます。もちろん、「ご飯にお醤油はかけないのよ」とコメントしますが、お醤油味は好まれます。ですので、一般の家庭で購入する場合は、500 グラム、1 キロという少量パックが主流です。日本のように 10 キロのお米が売られることはほとんどありません。やはりそれだけ、パンが主流なのですね。 友人にパン屋さんがいます。バルセロナからはちょっと離れている、El Vendrell という街。世界的チェロ奏者パブロ・ガザルスの生まれた町です。いろんなパンが作り出されているこのパン屋さん、生地にもこだわりますが、お惣菜パンが最高に美味しいのです。(https://www.facebook.com/calbadejo/) ちょっと遠くて行けない、という方、せめて写真だけでも見てみてください。 スーパーで売られているお米。 一パック 1 キロ入りが主流で、価格は 100 円ほど(写真協力 © Salvador Barrau Viñas)コシヒカリ以外に、ゆめみずほ、ひゃくまん穀、能登ひかり、ほほほの穂が石川県で栽培されています。それぞれの粒に特徴があり、味や粘り気など、多彩です。日本には一体、何種類のお米が存在するんでしょうか? スペインにももちろんお米の種類はありますし、お寿司に適した日本米も地中海側に位置するエブロ川のデルタ地域で栽培されたりしていますし、フランス南部のカマルグ地方もお米の産地です。だいたい、普通の丸い粒のお米、長くて少し透き通っている長いお米、また香りの強いバスマティがスーパーに並び、様々な料理に利用されます。それとともに玄米やキノアなども同じ棚に並ぶようになり、様々な栄養素を取り入れた、多国籍な料理が食卓に並ぶようになりました。 30 年前に製本の学校で一緒に学んだ女性は、「私は毎日同じものを食べることはないの。素材や味付けなど、いろんなものにトライするから毎日違うの。でも、夫は違うわ。一週間、それぞれの曜日に食べるものが決まっていてね。七種類の昼食、七種類の夕食がずっと続くの。飽きちゃうだろうって、私はゾッとするけれど、彼は彼、私は私よ」と言っていました。それくらい、クラシックな家庭がたくさんあったのは、多分、日本も同じなのでしょう。それが、今は、国を出ずに、他国のお料理が廉価で食べられる世の中になりました。そして、30 年前のその友人は、当時日本食レストランが 4 軒しかなく、食材店も少なかったあの頃(スペインの知られざる文化 No.21「何が食べたい? お寿司? 焼き鳥?」)に、すでにテリヤキの存在を知っていた人なのです。 お米のサラダ。薪の暖炉で焼くパンはまた格別 スペインのパエリアはすでに周知とは思いますが、アロス・ア・ラ・クバーナ(Arroz a la cubana キューバ風米料理)も有名です。これは、茹でた白米をお皿に乗せ、その上にトマトソース、目玉焼きが添えられ、食べる時にはそれらを各自が混ぜ合わせるのです。 今日は、食の基本、パンとお米の価格を見てみました。一概に、この二つの品で物価が高いか安いか、の判断はつきかねますが、主食の価格はそんなに高くはないようですね。それとともに、お料理の話もしてしまいました。食事前の方々、お腹が「グググ」と鳴ってしまったかしら? この時期たけなわの「ねぎ焼き」の記事は、バックナンバーをご覧ください。(スペインの知られざる文化 No.4「冬のグルメ、冬の風物詩」) ¡Qué venga ya la primavera! (ケ・ベンガ・ヤー・ラ・プリマベーラ) 春よ早くやってきて! この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 2022/05/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.56 2022/04/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.55 2022/03/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.54 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月