2019/05/08 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.25 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 日本では「平成」から「令和」となり、10 日間ものゴールデンウィークも過ぎ、日常が戻って来ました。ここで率直な質問です。 『あなたは、この長い連休を経験した後、元の生活に戻ることって、できますか?』 10 日の休暇は長いか短いか? 10 日の休みは好ましいか否か? と言うアンケート結果がメディアで流れ、それぞれの立場から、賛否両論の意見が聞かれました。スペインも日本同様、こういう連休では、職種によって休める人、休めない人、休まない人など存在しますので、このアンケート結果はほぼ日本と同じになるでしょう。 お祭りだ、見本市だ先日、バルセロナの友達からメッセージをもらいました。その内容は、「4 月 25 日から 5 月 7 日までの日本行きチケットを予約して、発券確定した後に、日本はゴールデンウィークだ、と気がついたんだ。今回は東京だけの滞在の予定。どんな問題が起きる? お店なんか、連休だから全部閉まってるの?」と。 外国人視線での不安は、大連休に旅行先で、美術館、商店、レストランなどが全て閉まってしまうこと。 冗談ではないのです。スペインでイースターやクリスマスといった長期休暇には、お店を閉めて、みんながお休みする、と言うのが一般的だからです。「お客様が神様」ではないのですね。ただ、今回のゴールデンウィークのように、10 日も祝日になってしまうこともないので、いずれも 2-3 日の休業になるのですが。 週末で週休二日制が一般的なスペインでは、土日に家族でお出かけ、ということになります。でも、そんなに遠出はしません。町のあちこちでいろんなイベントが行われるのですから。 サンツ・ボルデタ地区にある「サン・メディール教会」と、その前に集まった住人たち3 月 3 日には、サン・メディール(スペイン語でサン・メディン、303 年頃にいた農夫の名)のお祭りがあります。伝説の一つによると、時は、ローマ帝国皇帝のディオクレティアヌスによる「キリスト教迫害」の真っ最中、このメディールという農夫が 303 年頃、バルセロナの近郊「サン・クガット・デル・バジェス(Sant Cugat del Vallès)村」近くに住んでいたという伝説です。農夫がソラマメを蒔いている時に、サン・セベール司教(スペイン語でサン・セベロ)が迫害から逃れて通りかかりました。「迫害の手にかかる前に、自ら命を絶つことにした。追っ手が来たら、そう真実を伝えるように」と言い残した司教が畑を立ち去ると、蒔いていたソラマメがぐんぐん芽を出し始めたのです。 ほんの 20-30 分して、追っ手が畑のそばを通り、メディールを見つけますが、彼は司教に言われたように真実を話します。「司教は、私がソラマメを蒔いている時にここを通り、『迫害の手にかかる前に、自らの命を絶つ』と言い残して去りました」と。あたりは急速に成長したソラマメの蔓でいっぱい。さすがに、「ソラマメを蒔いていた時に」というくだんは、迫害者たちの逆鱗に触れたようで、「この嘘つきめ」と言われ、罪のない農夫、メディールは捕まることとなり、その後見つかったセベール司教とともに、死ぬまで幽閉された、ということなのです。 馬車には大量のキャンディーが積まれているそうして、この農夫は司教をかばい、助けようとしたことで「聖人」となり、その伝説に沿って、今もお祭りが行われているのです。 筆者の住んでいたサンツ・ボルデタ地区には、「サン・メディール教会」があり、そこを中心にお祭りが行われます。バルセロナ市内では、他に数カ所でも行われるこのイベントは、3 月 3 日が平日であれば、その日に。その日が日曜日ならば、次の日 4 日の平日に行われます。なぜか、お祭りは平日に行われることになっているのです。でも、サンツ・ボルデタ地区のお祭りは、必ず 3 日の次の週の日曜日に決まっています。今年は 3 日が日曜日だったので、その次の日曜日 10 日になりました。 騎馬隊と鼓笛隊が街を練り歩く馬や馬車(トラックの場合もあり)が装飾され、その上からキャンディーがばらまかれます。上記で伝説の一つをご紹介しましたが、他にも様々なバージョンがあって、時代の変遷によってソラマメがキャンディーに変わった、ということなのです。筆者がバルセロナに住み始めた 30 年以上前からすでにキャンディーがまかれていました。百聞は一見にしかず。画像をお楽しみください。 拾ったキャンディを入れるためのビニール袋を持って道路脇に控える女児。サリア地区では馬車でなく、トラックキャンディをもらうために沿道に集まる子供達。袋いっぱいのキャンディーにご満悦サラダ菜やイチジクなどの苗が売られている。自家製フルーツや野菜も4 月には、第 24 回「Día de la Terra(地球の日=アースデー)」のイベントが行われました。 これは世界的に 4 月 22 日に祝われるのですが、バルセロナは先行して 13、14 日の週末に開催しました。「地球に優しい生活を」というスローガンを掲げ、毎年違ったテーマを決めた見本市が行われます。例えば、2011 年にはチェルノブイリ原子力発電所事故 25 周年記念をテーマとし、原子力電力の問題提起が行われたり、2012 年には再生可能エネルギーがテーマとなったのですが、様々なジャンルからの参加がある青空見本市なのです。 アースデーのための冊子も用意される。 地球を守ろう、というデモの写真が表紙だエスペラント語も紹介されている。 写真はジョアン・アラルコン(Joan Alarcón)先生 エコ志向だろう、古本も並ぶ。エスペラント語の講座のテキストも。 地球すべての人が言葉の壁がなく理解し合えるように、という願いを込めて かなり増えてきた Ull Viu の製品と、その説明チラシ。 生産者の愛がこもっている二年前に、田舎に引っ越し、有機栽培での野菜やニワトリを飼い始めた友人夫婦の話をしました。 (スペインの知られざる文化 No.6) 「有機栽培の野菜を食卓に!」をモットーとした 「Ull Viu 」です。 古い家に移り住んだ二人は、まず天井や床、壁などの補修を試み、その後野菜の瓶詰などの作業を行う仕事場を整え、という地道な作業をこの二年間で進めてきました。「趣味」ではなく、「プロ」として作った製品を本格的に市場に送るためには、スペインの保健省の基準で作業所を用意しなければならないのですが、この辺りの基準は、多分日本でも同じだと思います。そこで作り出された製品を、晴れて今年のアースデーの見本市に出店することになったのです。 近隣だけでなく、市内からたくさんの人が訪れた青空見本市。 週末にもってこいだこうやって、週末には様々なイベントが町中で行われ、たくさんの人々が散歩に出ます。スペインには、国を挙げての 10 連休は存在しないのですが、週末であったり、年間 30 日以上の有給休暇で、長期休暇を楽しみます。日本も、有給休暇取得のお達しが法律として出たようですが、無事みなさんも有給休暇を消化して、リフレッシュができるようになれば良いのですが〜。 ¡A disfrutar de las vacaciones! (ア・ディスフルタール・デ・ラス・バガシオネス、休暇を楽しんで!) 近隣だけでなく、市内からたくさんの人が訪れた青空見本市。 週末にもってこいだ あ・・・。これを読む頃は、みなさん休暇を終えているのでした〜。 今月もありがとうございました! 来月も、どうぞ宜しくお願いいたします! ¡Hasta el próximo mes! (アスタ・エル・プロキシモ・メス!=また来月!) 左:青い空の下、会場にはテント。中央:スローガンは、地球は私たちの命。右:野菜で作ったキャンドル左:有機野菜が並ぶ。中央:コカと呼ばれる甘いパンたち。右:ハーブもたくさんの取り揃え左:パエリヤが用意される過程。中央:ナッツ類も豊富に。右:パンも豊富に この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2025/01/15 業界コラム スペインの知られざる文化 No.73 (最終回) 2024/12/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.72 2024/11/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.71 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月