2019/06/04 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.26 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 桜、新緑、と来れば、次は梅雨になり…、という月毎の季節の変化には大変驚かされるのが日本の気候です。スペインでは、月の動きによって変動するイースター(Semana Santa=サマナ・サンタ=聖週間)が 3 月または 4 月に祝われ、それが終わると南になればなるほど突然夏がやってきて、地中海沿岸では特に、9 月まで海水浴やキャンプを楽しめる気候なわけです。そんなイベリア半島での「半年は夏」の生活が、懐かしくもあり、それでいて季節感あふれる日本の生活も捨てがたく、5 月病ならぬ 6 月病を患っている筆者です。 バラが咲いた、バラが咲いた♪兼六園でも、様々なお花が咲いては終わり、週ごとに変わる色とりどりの景色は何度足を運んでもうっとりとしてしまいます。バルセロナのお花状況はどんな感じかといえば、写真協力をしてくれている Salvador 氏から、バラの花のコンクールの情報が届きました。場所はバルセロナの山手となり、近くにバルセロナ大学のキャンパスや図書館などもあり、町の中心より離れている 8 万 7 千 m2 以上の敷地の大きさ、東京ドームの 1.8 倍ほどになります。 広々とした公園には芝生が広がり、お散歩には最適パーゴラに這ったバラ。心地よい影ができるこの Parc de Cervantes(パルク・デ・セルバンテス=セルバンテス公園)という名の公園の目玉となるのがバラで、今がお花のピークです。ただ、温暖な地中海性気候のバルセロナでは、花が早いのが特徴で、早くは 4 月から、遅くは 11 月まで、バラのお花が楽しめるのです。品種で 245、約 11000 株のバラが植えられているこの公園は、1965 年に当時のバルセロナ公園庭園サービス局の局長、ルイス・リウドールによってデザインされたものです。 バラが植わっているだけではなく、数々のアート作品や、子供の遊戯ゾーン、ピクニックエリア、広大な芝生が広がり、パーゴラの下では日陰の涼しい風が、バラの香りとともに楽しめるようになっています。そして、ここでは毎年、国際的なバラの新種コンクールも行われるのです。 新種のバラのコンクール。自由に近寄り花を愛でる人々さて、私ごとで恐縮ですが、五月の半ばに、ご縁があり、広島を訪れる機会をいただけました。広島が本社の新川電機です、とお聞きしてはいたし、スペインでの折り鶴を作るたくさんのイベントやワークショップで必ずと言っていいほど、広島の折り鶴の話が出たものです。そして、たくさんのスペイン人の友達がすでに広島を訪れていて、原爆ドームや資料館のお話を聞いていたのですが、実は、筆者にとって、今回が初めての広島旅行となったのです。 お花と水。雨の後の青い空。清々しく、厳かな広島の朝その折に、今月のテーマをちらりとお話ししますと、広島でもゴールデンウィーク中にフラワーフェスティバルが行われ、平和大通りが歩行者天国になり、お花でいっぱいになるんですよ、とお聞きしました。まっすぐに伸びた、こんな大通りを通行止にしてしまうなんて、なんてすごいんだろう、と散歩しながら想像しました。バルセロナも歩行者天国をするけれど、こんなメイン通りを三日間も、と、今まではスペインの方がダイナミックと思っていたのですが、広島の懐の大きさに、びっくりしました。 原爆ドームは立ち入り禁止。 壁とよく似た模様のネコが。フリーパスのようだ早朝に広島市中心部を散歩したのですが、すでに修学旅行生たちのグループがたくさんの折り鶴の束を持ち、平和記念公園に集まっている姿に、こみ上げるものがありました。また、たくさんの人々の祈りの気持ちと、そこに祀られている方々の無念の気持ちがのしかかるような、そんな感情と力が非常に強い広島の朝でした。普段、いかに何も考えずに生きているのか、という反省の朝でもあり、たくさんの献花と太陽、そして涼しげな水面を見ながら、ここで苦しんだ方々を考えた時間でした。 広島の歩行者天国の噂をしていたら、サルバドールよりバルセロナのサンツ地区の歩行者天国の様子が送られてきました。スペイン広場から、隣町ホスピタレットという町を繋ぐ「サンツ通り」と「オスタフランク通り」(同じ通りが、途中で名前が変わる)を車両通行止めにし、その両側の商店を始め様々な出店が、合計 4 車線を埋めつくすのです。もちろん、三日ではなく、一日限りの催しですが、百聞は一見に如かず。画像でお楽しみください。 市場内(左の建物)から路上へ(1)。ごろりごろりと田舎パン(2)。「ちょっと食べてみる?」と店員に促され(4)。 日持ちする腸詰やタルトの量り売り(5)。左奥にはスペイン広場が見える(6)蜂が蜜を持ってくる、蜂のホテル。 ピアノの演奏が心良さそう。双子のひし形、という彫刻 少し寄り道してしまいましたが、本題に。 このセルバンテス公園には、「竹のばら」と名づけられたバラが、2011 年の東日本大震災の起こったちょうど一ヶ月後に、在バルセロナ日本総領事とバルセロナ市長の手により植えられました。「津波と地震で犠牲になられた方々とそのご家族に寄りそう」という記念植樹でした。ここスペインでも、お花は人々の心を癒し、痛みを和らげてくれるものなのです。そして、これは時代を問わず、また、国籍も問わず、世界の人々がお花を贈り、お花を作り、お花を愛でる。言葉は関係ないのですよね。 お花の魅力、そしてバラの香りに誘われて、たくさんの方が公園を訪れます。老若男女、国籍関係なく、素敵なものは素敵、なのです。今回の写真に、香りが付いていないのが非常に残念ですが、まずは目を楽しませてください。 今回のコラムが 37 号、つまり、書き始めて三年が過ぎました。今までは、スペインとの「違った点」ばかりをクローズアップして来たように思いますが、今回の広島滞在で、スペインとの「同じ点」を探すのもいいのかな、という気持ちに変わって来ました。さて、次回はどんなことをお伝えできるでしょうか? 来月の今頃は、梅雨明けですかね? ¡Qué tengáis un buen día! (ケ・テンガイス・ウン・ブエン・ディア=良い一日をお過ごしください) 写真協力: Salvador Barrau Viñas 一輪で凛と咲くバラと、花束のようにゴージャスなバラ。245種類もあれば、花より団子の筆者でも違いがわかる、というもの この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2025/01/15 業界コラム スペインの知られざる文化 No.73 (最終回) 2024/12/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.72 2024/11/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.71 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月