スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。
石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

7月半ばに入り、再度の自宅待機・移動制限が15日間にも渡り発令されたバルセロナの友達の中には、「もう、運動不足で太っちゃって」とか、「ちょっと料理に凝っちゃって」とか、さまざまです。日本でもステイホーム中には、自宅でスイーツを作るのが流行したり、断捨離が話題になったり、それぞれが自宅でできることを見つけたものです。

ステイホーム中の美味しい楽しみ

外食は、お出かけの際の楽しみの一つなのですが、最近の新コロナ拡大防止によって、レストランでの食事もままならない、というのが万国共通のようです。日本でも知られているスペイン料理、パエリャやアヒージョなど、ワインを片手に友達や家族と頂くのは、楽しいものなのですが、それも外出規制で外でいただけないというのが昨今です。
だけれども、そんな中でも楽しめるのが、ボカディージョ。他言語では「サンドイッチ」と言われるのが、今日ご紹介するスペインの「美味しいもの」です。

日本には、お弁当という文化があり、おにぎり、という名の持ち運び可能な食事が確立されていますよね。コンビニ、スーパー、ドラッグストア、などなど、おにぎりの売られていないお店を探す方が大変ですよね。ボカディージョも日本のおにぎり同様、スペインでは最もポピュラーな食べ物と言えるでしょう。

おにぎりに米飯が必須のように、ボカディージョにはパンが必要です。パンの文化、ここスペインでは、食パンからバゲット、果ては田舎パンまで、あらゆるパンでボカディージョができます。パンとパンの間に具を挟み込むのがボカディージョ。パンの上に具が乗ると、トラーダという名前になったり、と、なかなか複雑です。言葉ではなかなか説明できない「美味しいもの」ですが、今月も画像をお楽しみください。あ、お昼前に読まれた方…、もう少し我慢してくださいませ。まだお昼を決めていない方、街をさまよい、サンドイッチを探すのも楽しいかも、です。

田舎パンですが、長い形状のバゲット(Baguete)ではなく、丸いもので、それを切っていきます。細長いものよりは日持ちがして、キメもどちらかというともっちりしているのが特徴です。都会であれば、そこそこのパンを出していれば、パン屋さんも経営が成り立つのですが、田舎であれば、いかに美味しいパンを出せるか、で、お店の存続にも影響するという、たかがパン、されどパン、なのです。
また、バゲットと一言で言っても、その種類は多岐にわたり、パン屋さんに行くと毎回迷ってしまうわけです。好みや、用途によってパンを買って行くスペイン人たちのこだわりも興味深いですね。

ダリ美術館の外壁をよく見ると、茶色の点々が。ズームすると、パン! 田舎パンの一種だ
食卓に上るパンには、トマト、オリーブオイル、塩が塗られる。それに具が乗ると、トラーダと呼ばれる
イヴァナの朝食は、ミニ。たっぷりのトマト、オリーブオイルを塗ったパンには、ハムとチーズが添えられる。片手で食べれるのが忙しい朝には嬉しい

様々なパンに、様々な具が。バゲットより細いパンは「フラウタ(Flauta=フルート)」と呼ばれる。ビール、ワイン、コーヒーと、飲み物はお好みで。
朝10時過ぎにいただく時も、もちろんアルコールは「あり!」
「私の顔より大きなボカディージョと撮った写真があるよ」と協力してくれたのがライアちゃん。完食したのか、否かは、ご想像に任せよう。中身はトルティーリャ・デ・パタタス(Tortilla de patatas、ジャガイモのスペイン風オムレツ)

このタイプのボカディージョは、持ち運びにも便利で、学校に行く子供達、職場に向かう大人たち、様々な人が実はこっそりバッグに忍ばせているのです。もちろん、このバルでいただくボカディージョも、持ち帰り用に包んでくれます。「パラ・ジェバール(Para llevar)」と言うと、アルミホイルを広げ、ボカディージョを包み、ペーパーナフキンと共に袋に入れ渡してくれるのです。

リディアのデリカテッセンのお店でもおしゃれなボカディージョが作られる。皿に乗らず、立っているのは、バゲットの中身が掘り出され、そこに生ハムが詰め込まれたもの。見た目にも楽しく、色々なアイディアを駆使

バルセロナを首都としたカタルーニャ地方には、スペイン全土とは違った料理が存在します。日本にも各県に郷土料理があるのと同じですね。ベゴーニャはこんなトラーダを作ってくれました。エスカリバーダ(Escalivada)はナス、ピーマン、玉ねぎ、トマトなどをオーブンやフライパンで焼いて、皮をむき、オリーブオイル、好みでビネガー、塩で味付けするものです。日本での焼きナスのイメージです。それと、コスタ・ブラバ特産のアンチョビを乗っける、と言うものです。

北に行くと、モンタディート、ピンチョと呼ばれる美味しいものもいただけます。

もちろん、サルバドールも表現してくれました。昔ながらのポロンで飲むワインに、トラーダにボカディージョ。いつになったら遊びに行けるでしょうか? この美味しいものを夢見て、今月も頑張っていきましょう! ちなみに、ポロンでの飲み方は、『スペインの知られざる文化 No.31』で説明しています。

今月のワンフレーズは、
¡Buen provecho! (ブエン・プロベチョ)「召し上がれ!」

まだまだ残暑。たくさん食べて、水分摂って、暑さを乗り切りましょう!

≪写真協力≫
Ivanna氏
Laia氏
Lidia氏
Begoña氏

≪イラスト協力≫
Salvador Barrau氏