2020/10/12 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.41 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 寒ければ、夏でもセーター。暑ければ、冬でもTシャツ。 急激な気温変化のあった九月、台風や雨の続いた十月、そしてめっきり秋になった十一月。日本もスペインも、基本的には四つの季節、四季があり、それぞれの時期にさまざまなお祭りやイベントが開催されるのですが、日本とスペインにはちょっと違いがあります。それが、「衣替え」という概念です。 衣替え、という概念はあまりありません度々、「スペインでは衣替えという概念がない」と言って来ましたが、実はスペインも広いため、南は温暖、北は雪も降る、という地域も存在することを詳しくお伝えしていませんでしたね。ごめんなさい。そのため、夏でも夜は気温が下がる内陸では、厚手のカーディガンは必需品。その辺り、クローゼットにはすぐ取り出せるところに全気候の衣類が揃っているのが普通です。寝るときには窓全開で、シーツ一枚、なんていうのは年に数週間のことだと聞いています。 広々としたキャンプ場。春、夏、秋は楽に楽しめるが、一日の気温の変化には注意筆者が好んだ夏休みの行事に、一人キャンプがありました。オートキャンプ場でテントを張って寝るのと、村にあるオスタル(Hostal、ホテルより少々カテゴリーが下がる宿)やペンション(Pensión)に宿泊するのも、価格的には変わらないし、トイレやシャワーに行くのにキャンプ場では、野外を突っ切らなければならない、など、不便があるため、なかなか友達と一緒には行けなかったのですが、何しろ夜中に目が覚めてテントを出ると、満天の星空、そして清々しい風というのが大のお気に入りでした。15年ほど前のある夏休み、七月だったのですが、イベリア半島内陸のアラゴン地方のテルエルという町の近郊のキャンプ場で、大失敗に気がついたのです ! Albarracínに行ったのは七月も半ば。日中はジリジリとした太陽。それが夜は急激に冷える日中は山道をドライブし、駐車スペースに車を駐めて散策。日焼け止めを塗り、山の岩肌に残されたArte Prehistórico(アルテ・プレイストリコ=先史時代の芸術)の野外の絵画を見て歩き、大満足。その後近くの村で食事をして、さて、テントへ。しかし、待っていたのは急激な気温下降。まさかの寒さで、持っているセーターやタオルなど、ありとあらゆるものをシュラフにかけ、それでもガタガタと震えた夜を過ごしたわけなのです。それ以来、夏でも毛布は一枚、車に積むのを忘れてはいません。 ありがたいことに、バルセロナは、晴れた日が年間300日ある、と言われていて、季節により気温の高低差はあるものの、太陽が出ていれば、日中はポカポカとして来ます。そこでも、「衣替え」はできない、というのも事実なのです。朝晩は10度を超えるぐらい、そして日中は23度越え、日向と日陰の気温がかなり違う、となると、家を出るときには上着が必要になります。そしてお昼過ぎに町に出ると、それを脱ぐ、ということになるのです。暑いので、下は半袖、そこにスカーフやマフラー、ジャケット、というわけです。筆者が半袖を着なかった時期は、一月後半から二月中旬まで。ですから、「合服」という季節の衣類は、ほとんど持っていなかった、というわけです。 一月の室内はエアコンが効き、セーターやカーディガンを脱いで、半袖、なんてのは当たり前最近は空調の良さで、デパート、スーパー、銀行や郵便局、もちろん仕事で会社に行っても、エアコンで温度管理がされています。また、バルセロナのような都会では、金沢のようなドアツードアでの車生活ではなく、バス、地下鉄などを利用するので、自ずと徒歩での移動も伴うわけです。毎日歩くことが習慣となっていて、そうすると、自然と暑くなって来るわけなのです。純毛の手編みセーターなども持っていたのですが、逆に温度調整には不便なため、タンスの肥やしとなってしまい、もったいないことになりました。 「スペインの知られざる文化 No.4」でねぎ焼きをご紹介したときの写真。三月も屋外で半袖OK !会社の内勤の時には、日本でもよく聞く、「エアコン戦争」にも巻き込まれました。夏の通勤は暑いので、まるでビーチに行くかのような軽装。足元は素足にサンダル。原則会社の人以外とは会わない、出版社でのDTP作業のため、ドレスコードはゆるゆるなのです。そこで暑がりの同僚との戦いです。エアコンの送風口に近寄らないように、とはいえ、そう簡単にデスクの配置を変えることはできません。そこで、会社のデスクの下には、足を入れるための室内用ぬくぬくブーツと、首元にはスカーフ、そしてフリースのひざ掛けとカーディガンが必要なのです。これでは、夏物と冬物を入れ替える、なんてことは全く不可能ですよね。 八月半ばの様子。寒ければ、着る、暑ければ、脱ぐあと、年齢や体格、体調などによって、それぞれの体感温度も変わってくるため、夏でもベストを着ている人、夏でもハイネックの人、冬なのに素足、冬なのに半袖、などなど、町には多種多様なファッションが存在する、ということなのです。あ、「夏でも」「冬なのに」という言い方からして、差別的な感じがしてきさえします。いけない、いけない。また、ヨーロッパの北のほうから太陽を求めてバカンスに来る人たちは、二月でも半袖で、自国にはない太陽を浴びながら町を闊歩するわけです。ですから、27年ぶりに日本の梅雨を過ごした2015年に、寒々しく雨の降る中、衣替えの後の夏服を着た人々を見て、違和感を感じてしまいました。 五月もやっぱり、みんなさまざまな格好だ。セーターあり、タンクトップあり十月もしかり ! 暑ければ泳ぐ、寒ければ着込む寒ければ、着る。暑ければ、脱ぐ。 筆者は今でも衣替えは無視しています。周りからは、「暑くないの?」「寒くないの?」と、心配の言葉をいただきます。心配されているんだ、という思い込みの激しい筆者ですが、もしかして私の様相は、周りの人から見て、暑苦しく、もしくは寒々しく映るのかしら? ちょっと反省の今日この頃です。 新コロナ禍でも変わらない。町をゆく人々のスタイルは、あくまでも個性的だ写真取材を快く引き受けてくれるSalvador氏。この日も俳句ラジオの友人たちと集えば、この通り今月のワンフレーズは、 ¡Vamos a tomar el sol ! (バモス・ア・トマール・エル・ソル) 「さあ、太陽を浴びましょう !」 寒くなってきましたが、太陽に遭遇したら、ぜひ ! ≪写真協力≫ Salvador Barrau氏 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2025/01/15 業界コラム スペインの知られざる文化 No.73 (最終回) 2024/12/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.72 2024/11/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.71 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月