スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。
石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

チャビーとアンドレアに出会ったのは、スペイン各地にも進出しているフランスの総合小売チェーン店フナック(fnac)のカルチャースペースで、筆ペンのワークショップをしている時でした。

チャビー、エヴァ、アンドレア親子。2014年にワークショップで出会い、今に至る

バルセロナの各地区にあるフナックで、毎月3〜4回の折り紙を中心にしたワークショップを請け負っていた筆者は、それぞれのお店の客層や年齢層などによって、折り紙だけでなく、「筆ペンを使って日本語で名前を書きましょう」とか、「和綴の手帳を作りましょう」などと様々な遊びを提供しました。もちろん参加は無料、大人も子供もみんなが楽しめて、1時間の間に出来上がるワークショップ。そのファンになってくれたのが、この親子でした。

いくつになっても、子供の心を忘れないでね

千代紙とつまようじでお人形、白い紙を和綴じでメモ帳に、遊ぶアイディアは無限に出てくる。チャビーとアンドレアも毎回参加してくれた。時には集中、時には笑いで、ワークショップはいつも和やかだった

毎月発行されるカレンダーを見て、毎回訪ねてきてくれたこの2人の他にも、たくさんの人たちと楽しい時間を過ごし、今でもFacebookなどで近況を交換することがあります。「あれ、私たちって、どこで知り合ったんだっけ?」と言うと、「ほら、折り紙ワークショップよ」とか、「紙人形の栞の時よ」など、自分でも忘れていることの方が多いくらい。

アンドレアが参加した筆ペンのワークショップでは、アルファベットとカタカナの対応表を用意して、各自が自分の名前を見つけることから始めます。スペイン語は、基本子音と母音の組み合わせで発音されることが多く、フランス語や英語などより発音が優しい、と思われがちなのですが、実は子音が2つ、3つとつづく単語もあり、日本人には発音の難しい言語でもあります。アンドレアは、カタカナで自分の名前を書くと、本来スペイン語ならば「An−dre−a」となるべき発音が、日本語にすると「A−n−do−re−a」になると知り、大爆笑。あまりのお気に入りに、ちゃんと日本語読みで名前を読み、自己紹介するほどのお茶目さん。知り合った当時は8歳になりたてで、でもとってもおしゃまなところもあり、その愛くるしい笑顔には、癒されっぱなしでした。

この日はくす玉。出来上がりだけ見ると難しそうだが、基本同じピースをいくつも折り、組み合わせるものなので、誰にでも作れる。「難しいだろう」という固定観念さえ振り払えば、あとはこの満面の笑顔!

ラベンダーのポーチを作ろう、というワークショップを開催のチャビーとエヴァ

カタツムリがトレードマーク

この娘さんを連れて来ていたのが、お父さんのチャビーで、子供達に負けないぐらい、子供の心を持ち続けるお父さん。何度もワークショップで遊ぶうちに、すっかりお友達になったのです。そして、実はこのチャビーは、妻のエヴァとともに、筆者なんかよりずっと昔から、楽しい催し物を開催しているカップルだったのです。

Clancarakol(クランカラコル)という名で、エヴァとチャビーが「人生を謳歌」し始めて18年以上が経ちます。最初はアンダルシア地方(10月にご紹介した『アンダルシア地方の村の様子』)で、そして現在はカタルーニャ地方で活動しています。子どものみならず、大人の心の中にも生き続ける「子供の頃に持っていた興味、イマジネーション、感情の自由」を満たし、純粋でシンプルな楽しみとの出会いの場を提供し続けています。

ストーリーテリングでは、子供達がかぶりつき。広場での催しがない時には、アトリエで登場人物を用意する。一体どれだけのキャラクターがあるのか?

なんども練習し、本番に挑む劇、子供達と直接遊ぶワークショップ、なんとも多いバリエーションだ

この二人が基本としているのが、子供達、そして子供の心を持ち続ける大人達の感受性を尊重する、というもので、年齢に関係なく、みんなが自由に参加できるアクティビティを多数開催しています。二人の心から湧き出るエネルギーは、次のような楽しい催し物にて表現されます。

まずは、生演奏の音楽を組み合わせ、著名な作品から、伝承ものがたり、そこにアドリブを交えた参加型のストーリーテリング。そして、より素敵でより良い世界へと見るものを誘う、マリオネットやパペットを使っての人形劇。それぞれの参加者が情熱や、偏見のない芸術的インスピレーションを感じることのできる、さまざまなワークショップ。新しい友達との出会いが楽しめる、みんなでダンス。自分がなってみたかった人へ変身できるアーティスティック・メーク。そして彼らのすべてのショーや催し物には、ダンスあり、ピエロあり、劇や音楽、ポエムに折り紙などが登場します。Clancarakolは、すべての人が、それぞれの心の中に持つ魔法を実現するための、アドベンチャーであることは間違いありません。

百聞は一見にしかず。私の言葉よりも、画像を見てもらった方が、ワクワクした気持ちが伝わるのかな、と思います。実際、12月のクリスマスの声が聞こえる頃から、1月のこどもの日までは、町のあちこちでたくさんのワークショップや催し物が行われるというのが、去年までの慣例でした。今シーズンは新コロナの影響で、どこの国も自粛ムードが満載。そんな中の、せめての目の保養でしょうか。

アーティスティック・メークで、自分のなりたい人に変身!
パグパイプを手に、みんなをClancarakolの世界に引きずり込む。「引き込む」ではなく「引きずり込む」という言葉が妙に合う

チャビーに自分たちのClancarakolのことを紹介をしてもらい、それを私の言葉で説明しましたが、最後にぜひこれは載せて、と言われた部分があるので、僭越ながら、引用させていただくことにしますね。筆者も楽しんで行っていたたくさんのワークショップが、こうやって別の誰かの心に残っている、なんて、とても素敵なことです。

「長年に渡たる『マジカルな冒険』という人生の中、僕たちと同じように「開かれた心」を持つたくさんの人達と知り合って来たんだ。そういう宝物とも言える人々の一人が、バルセロナで日本の文字や、折り紙を楽しいワークショップを通じて教えてくれた、僕等が友、杉田美保子。彼女からは、単に字を書いたり、紙を折り曲げたりを学んだだけではなく、彼女が作り上げた日本と西洋の文化の架け橋を渡ることができたんだ。この経験によって、これから日本の素晴らしい人たちに知り合うことがあれば、いつまでも尊重の気持ちでお付き合いを願うことになるね。出会ってから何年も経つけれど、今でも「日本に良い友達がいるんだ」というのが自慢で、こうやってより良い世界を大きくしていきたいと思ってる。美保子、君の魔法の心を僕たちに開いてくれて、ありがとう。そして、僕たちの心の中には、いつまでも君の居場所があるからね!」

このコラムのために、チャビ―とエヴァが動画を送ってくれました!

【チャビーのパグパイプ演奏動画の冒頭挨拶の日本語訳はこちら】
美保子という友達のおかげで、日本の素敵なみなさまにご挨拶ができ、嬉しく思います。 このビデオに出てくる楽器は、アストゥリアス地方のガイタ(英語ではパグパイプと言います)で、メロディーはその隣のガリシア地方のもの。奏者はハビィです。様々な町が入り混じり、アートができるのは、人類にとって、とても豊かなことです。 ぜひ日本でお会いしたいものです! コンパニーア・クランカラコル
Gracias a nuestra Amiga Mihoko podemos Saludar a la Buena Gente de Japón. Nuestro instrumento musical en este vídeo es la Gaita Asturiana, y las melodías son de Galicia. El Gaitero es Javi. El Encuentro entre los Pueblos es una Riqueza para la Humanidad. ¡Nos Encontraremos en Japón! Compañía Clancarakol.

音声はスペイン語なので、字幕を表示したい場合は下記を参考にされてください。
https://support.google.com/youtube/answer/100078?co=GENIE.Platform%3DDesktop&hl=ja


チャビーのパグパイプ

【エヴァの人形劇の動画紹介文】
友達の美保子が、僕たちのアートを日本のみなさまに紹介する橋渡しをしてくれました。開放されたハートを持つ人々の間には国境はなく、ビデオの主人公の人魚は、日本のみなさまにも微笑みを誘うことでしょう。操り人形師はエバです。 興味を持っていただき、ありがとう。みんなで素敵な世界を作っていきましょう! コンパニーア・クランカラコル
Nuestra Amiga Mihoko ha hecho de puente artístico para que nuestro Arte sea Disfrutado en Japón. Los Corazones Abiertos no tienen fronteras, y la Sirena estará encantada de alimentar las Sonrisas Japonesas. La Titiritera es Eva. ¡Gracias por vuestra Curiosidad, seguiremos construyendo un Mundo Mejor! Compañía Clancarakol.


エヴァの人形劇

エヴァのお人形も、チャビーのパグパイプも、彼らのピュアな心を表現するのに一役買っている。ちょっとシャイな二人の小道具なのか?
日本に遊びに来れる日が来るよう、祈るばかりだ

ということで、今日のワンフレーズは、
¡Muchas gracias, amigos!(ムーチャス・グラシャアス、アミーゴス=どうもありがとう、友達たちよ!)
¡Os esperamos en Japón! (オス・エスペラモス・エン・ハポン=日本で君たちを待ってるよ!)