遅ればせながら、¡Feliz Año Nuevo! (フェリス・アーニョ・ヌエボ=新年おめでとうございます)
雪で暮れ、雪で明けた金沢ですが、大混乱になることはなく、ただ数日おきに気温変動がありました。その日の状況をうまく把握した服装をできれば良いのですが、たまに大失敗し、汗をかくほど暑かったり、凍えるほど寒かったり。そして二月に入り、それがまだしばらく続くんでしょうね。
新婚旅行、どこまでいける?
さて、昨年12月の初めに、通院しているクリニックの予約を頼もうとすると、「実は〇〇先生、長期休暇を取られることになって、年明けしか予約入らないんです」ということになりました。「ははぁ。そうか、アレだな」と気づいたものの、そこは大人なので、「じゃあ1月に入ってからで…」と予約しました。年が明け、久々に先生に会うと単刀直入、「もしかして、新婚旅行とかでしたかぁ?」と話しかけ、「はい」という答え。ビンゴ! ああ、なんと良い響き! 特にこの現在の、海外旅行さえままならない世間の空気の中、新婚旅行を楽しまれたなんて!
このコラムのテーマにしよう、ということで、ちょっと質問を開始。
どうやら新幹線で九州まで行き、そこでレンタカーを借りて観光をし、帰りも新幹線で、というルート。何しろ旅先で車があるのは、移動のみならず、お土産を買っても、どんどんトランクに入れちゃえ、ということで便利ですよね。「五泊六日なんていう長い旅なんて、初めてですから」とのこと。内心「たった五泊六日?」と思ったのですが、そこはグッとこらえて…。大人ですから! 「じゃあ、有給休暇を使われたんですか?」の答えも想像通り、「そうなんです」と。
では、スペインの新婚旅行はどうなのか、ちょっとお話ししますね。その昔は教会を通しての結婚式が多く、近年になり市役所での婚姻届式が流行り、ここ数年では日本でも取り挙げられている「事実婚」を選択し、「結婚」という形にこだわらないカップルがたくさんいます。何れの結婚にしても、その後親戚へのお披露目ということで内輪の披露宴をしたり、友達と食事会というのは日本と同じです。ただ、スペインという国は、婚姻届を出しても誰の名字も変わらない、という国なので、日本のように保険証や免許証、各種資格証明書の名義を変えることはありません。ただ、日本にはあまり記入する項目として存在しない「Estado civil(エスタード・シビル)=市民状況」は変更しなければいけないため、何がしかの届け出は必要になります。この市民状況とは国によって違い、スペインでは「独身者」「既婚者」「離婚者」「死別者」で登録され、印鑑は使用しないので変更という作業がいりません。
(スペインでの結婚後の名字のお話は2018年5月号で)。


事実婚は、同居していることを証明する必要があり、認められると婚姻とほぼ同等の権利や保証が得られるというもの。が、しかし、社会的には「婚姻」することにより発生するものもあります。それが、「婚姻休暇」であり、「新婚旅行休暇」というものなのです。
10年以上前にスペインで会社勤めをしていた時には、確か「週末を含んで数えた11日間の新婚旅行休暇」というのが認められていた、というのが会社の規定だったと記憶しています。これには結婚式のための休みは含まれていなかったと思いますが、だいたい週末に結婚式を行い、その次の月曜日から単純に11日間、つまり、ほぼほぼ2週間の休暇が取得できるというのがスペインの労働法で認められている休暇です。もちろん、有給です。そこに従来取得できる夏やクリスマスの休暇のうちの数日をくっつければ、「じゃあ新婚旅行は日本に!」が可能で、筆者の住む金沢に新婚旅行に来た友達カップルもいるのです。

私たちの両親世代の新婚旅行は、スペインのその世代の方々の旅行とそんなに違わないようです。スペインの友達に聞いてみると、彼らはSemana Santa(セマナ・サンタ=聖週間[イースター])の休暇を利用して旅行し、連休が明けると仕事に戻ったということですが、同僚たちの中には特別に休暇を申請し、旅行に出かけた人もいたということです。「セマナ・サンタ」というのはあまり日本では知られていないのですが、スペインでは「夏休み」、「クリスマス休暇」とともに国民が楽しみにしている三大休暇の一つです。日本で言うところの、「夏休み」「暮れと新年」に次ぐ、「ゴールデンウィーク」のような大型休暇です。
2022年のカレンダーだと8日間あり、日本のゴールデンウィークに匹敵する日数ですね。日程もだいたいそれに似ているのですが、ヨーロッパの場合には、キリスト教のカレンダーによって日にちが動くわけです。それから現代になり、労働者のための法律も確立して来たため、長期休暇を取りやすくもなって来ていますね。
多分、日本もバブル時代には豪華な結婚式や、外国への新婚旅行も流行っていましたよね。それが、ここ2年のパンデミックで、ことごとく昔に逆戻りとなってしまっているようです。

私が過去に金沢でアテンドした、数組のカップルのお話を、数回にわたってお話していくことにしましょう。また、スペイン人カップルで日本に来たことのない友人の新婚旅行のお話も尋ねているので、この寒い時期は心温まるお話で進めていこうと思います。そこで日本とスペインの違い、時代の違い、考え方の違いなど、新婚旅行一つ取っても、お話することが多々あると思います。また、プライベートなことなので、もちろんお名前は出しませんが…。今回は、ちょうどパンデミックが始まる2年前に来た友人カップル、二人のイニシャルをとって「B. y M.(ベ・イ・エメ=BとM)さん」にしましょうか。
2018年の3月頭に「美保子! チケット取ったよ! 今週中には宿泊施設を押さえたいんだけれど〜」と言うメールが来ました。「日程は、8月6日から23日までだけれど、美保子の住む地域には、16日から21日になる予定。ねえねえ、美保子のうちに泊まっても良いよって言ってくれたけれど、大丈夫?」と続くのですが、「もちろんオッケー、ただし、8月はお盆で、今年は10日から15日は移動に気をつけないと行けないわよ」と言うアドバイスを追加しなければならなかったのです。

それから8月まで、旅行の日程を詰めることになるのですが、最近はアプリでメッセージが交換できるので、毎回質問があれば答え、こちらのオススメがあればリンクを送り、着々とプランが練り上がっていきました。南の島のビーチなどでじっくり滞在型の日々を楽しむ、と言うのが新婚旅行の定番ですが、最近では山に行ったり、探検に行ったり、と言う旅行も増え、それぞれのカップルの考え方で行き先も多様になって来ました。

そんな金沢での滞在中、「ベ・イ・エメ」さんたちは、普通のツーリストがしない旅行を楽しみました。と言うのも、ちょうどお盆の時期で、我が家が檀家になっているお寺さんの行事があり、手伝いをしなければならなかったり、京都に日帰りで試験を受けに行かなければならなかったりと、かなりタイトな日程だったのです。
そんな中、私が誰を同行しても驚くことのない人々のおかげで、友人たちは日本の信仰を垣間見ることになり、今回彼らはお盆の「送り火」、次の日の法要の「食事会」などを地域の人々と楽しむことができました。これで金沢の評価が上がらないわけがない!

新婚旅行、と聞くと「お邪魔虫になってはいけない」と考えるのが普通なんですが、実は結婚する前から一緒に住んでいるカップルはとても多いのです。人生の転換期で「婚姻」と言う選択をする人、「事実婚」で不便はないから結婚は考えない人、などなど多種多様なライフスタイルがあります。その中で、こうやって金沢に来てくれれば、とても「新婚」でなくても、独創的な旅行が楽しめるし、私もアテンドする甲斐がある、と言うものです。
では、この寒い時期、少しでも心が温まってもらえれば幸いです。
今日のフレーズは、結婚式の乾杯で定番の掛け声です。
¡Vivan los novios ! (ビバン・ロス・ノビオス!)
「新郎新婦に幸あれ !」
※ 本コラムで掲載している写真は、当時(2018年)に撮影したものです。
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