2022/02/08 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.53 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 遅ればせながら、¡Feliz Año Nuevo! (フェリス・アーニョ・ヌエボ=新年おめでとうございます) 雪で暮れ、雪で明けた金沢ですが、大混乱になることはなく、ただ数日おきに気温変動がありました。その日の状況をうまく把握した服装をできれば良いのですが、たまに大失敗し、汗をかくほど暑かったり、凍えるほど寒かったり。そして二月に入り、それがまだしばらく続くんでしょうね。 新婚旅行、どこまでいける?さて、昨年12月の初めに、通院しているクリニックの予約を頼もうとすると、「実は〇〇先生、長期休暇を取られることになって、年明けしか予約入らないんです」ということになりました。「ははぁ。そうか、アレだな」と気づいたものの、そこは大人なので、「じゃあ1月に入ってからで…」と予約しました。年が明け、久々に先生に会うと単刀直入、「もしかして、新婚旅行とかでしたかぁ?」と話しかけ、「はい」という答え。ビンゴ! ああ、なんと良い響き! 特にこの現在の、海外旅行さえままならない世間の空気の中、新婚旅行を楽しまれたなんて! このコラムのテーマにしよう、ということで、ちょっと質問を開始。 どうやら新幹線で九州まで行き、そこでレンタカーを借りて観光をし、帰りも新幹線で、というルート。何しろ旅先で車があるのは、移動のみならず、お土産を買っても、どんどんトランクに入れちゃえ、ということで便利ですよね。「五泊六日なんていう長い旅なんて、初めてですから」とのこと。内心「たった五泊六日?」と思ったのですが、そこはグッとこらえて…。大人ですから! 「じゃあ、有給休暇を使われたんですか?」の答えも想像通り、「そうなんです」と。 では、スペインの新婚旅行はどうなのか、ちょっとお話ししますね。その昔は教会を通しての結婚式が多く、近年になり市役所での婚姻届式が流行り、ここ数年では日本でも取り挙げられている「事実婚」を選択し、「結婚」という形にこだわらないカップルがたくさんいます。何れの結婚にしても、その後親戚へのお披露目ということで内輪の披露宴をしたり、友達と食事会というのは日本と同じです。ただ、スペインという国は、婚姻届を出しても誰の名字も変わらない、という国なので、日本のように保険証や免許証、各種資格証明書の名義を変えることはありません。ただ、日本にはあまり記入する項目として存在しない「Estado civil(エスタード・シビル)=市民状況」は変更しなければいけないため、何がしかの届け出は必要になります。この市民状況とは国によって違い、スペインでは「独身者」「既婚者」「離婚者」「死別者」で登録され、印鑑は使用しないので変更という作業がいりません。 (スペインでの結婚後の名字のお話は2018年5月号で)。 お寺行事に連れてこられたベ・イ・エメ。近所にはこんな風景しかなく、それでも広大な田んぼの中で自然と戯れる金沢に到着した日の夕方。この日8月16日、金沢の墓地では、捧げられたキリコに一斉に火を灯す「送り火」という行事事実婚は、同居していることを証明する必要があり、認められると婚姻とほぼ同等の権利や保証が得られるというもの。が、しかし、社会的には「婚姻」することにより発生するものもあります。それが、「婚姻休暇」であり、「新婚旅行休暇」というものなのです。 10年以上前にスペインで会社勤めをしていた時には、確か「週末を含んで数えた11日間の新婚旅行休暇」というのが認められていた、というのが会社の規定だったと記憶しています。これには結婚式のための休みは含まれていなかったと思いますが、だいたい週末に結婚式を行い、その次の月曜日から単純に11日間、つまり、ほぼほぼ2週間の休暇が取得できるというのがスペインの労働法で認められている休暇です。もちろん、有給です。そこに従来取得できる夏やクリスマスの休暇のうちの数日をくっつければ、「じゃあ新婚旅行は日本に!」が可能で、筆者の住む金沢に新婚旅行に来た友達カップルもいるのです。 信者さんたちとの食事会に同席。料理店では食べることのできない数々の小皿に満面の笑み(残念ながらお顔は出しませんが)私たちの両親世代の新婚旅行は、スペインのその世代の方々の旅行とそんなに違わないようです。スペインの友達に聞いてみると、彼らはSemana Santa(セマナ・サンタ=聖週間[イースター])の休暇を利用して旅行し、連休が明けると仕事に戻ったということですが、同僚たちの中には特別に休暇を申請し、旅行に出かけた人もいたということです。「セマナ・サンタ」というのはあまり日本では知られていないのですが、スペインでは「夏休み」、「クリスマス休暇」とともに国民が楽しみにしている三大休暇の一つです。日本で言うところの、「夏休み」「暮れと新年」に次ぐ、「ゴールデンウィーク」のような大型休暇です。 2022年のカレンダーだと8日間あり、日本のゴールデンウィークに匹敵する日数ですね。日程もだいたいそれに似ているのですが、ヨーロッパの場合には、キリスト教のカレンダーによって日にちが動くわけです。それから現代になり、労働者のための法律も確立して来たため、長期休暇を取りやすくもなって来ていますね。 多分、日本もバブル時代には豪華な結婚式や、外国への新婚旅行も流行っていましたよね。それが、ここ2年のパンデミックで、ことごとく昔に逆戻りとなってしまっているようです。 東別院通りのカウンター式の飲み屋さん。外国人の方のみだと、言葉が通じないのでNGと言っていた妙齢(80越え)ママさんだが、筆者の顔を見てOK。日本酒一杯私が過去に金沢でアテンドした、数組のカップルのお話を、数回にわたってお話していくことにしましょう。また、スペイン人カップルで日本に来たことのない友人の新婚旅行のお話も尋ねているので、この寒い時期は心温まるお話で進めていこうと思います。そこで日本とスペインの違い、時代の違い、考え方の違いなど、新婚旅行一つ取っても、お話することが多々あると思います。また、プライベートなことなので、もちろんお名前は出しませんが…。今回は、ちょうどパンデミックが始まる2年前に来た友人カップル、二人のイニシャルをとって「B. y M.(ベ・イ・エメ=BとM)さん」にしましょうか。 2018年の3月頭に「美保子! チケット取ったよ! 今週中には宿泊施設を押さえたいんだけれど〜」と言うメールが来ました。「日程は、8月6日から23日までだけれど、美保子の住む地域には、16日から21日になる予定。ねえねえ、美保子のうちに泊まっても良いよって言ってくれたけれど、大丈夫?」と続くのですが、「もちろんオッケー、ただし、8月はお盆で、今年は10日から15日は移動に気をつけないと行けないわよ」と言うアドバイスを追加しなければならなかったのです。 「絶対、飛騨牛食べる! 美保子、もちろん僕らがご招待するから!」ということで、高山で焼肉それから8月まで、旅行の日程を詰めることになるのですが、最近はアプリでメッセージが交換できるので、毎回質問があれば答え、こちらのオススメがあればリンクを送り、着々とプランが練り上がっていきました。南の島のビーチなどでじっくり滞在型の日々を楽しむ、と言うのが新婚旅行の定番ですが、最近では山に行ったり、探検に行ったり、と言う旅行も増え、それぞれのカップルの考え方で行き先も多様になって来ました。 「能登、行きましょう、行きましょう」ということで、巌門そんな金沢での滞在中、「ベ・イ・エメ」さんたちは、普通のツーリストがしない旅行を楽しみました。と言うのも、ちょうどお盆の時期で、我が家が檀家になっているお寺さんの行事があり、手伝いをしなければならなかったり、京都に日帰りで試験を受けに行かなければならなかったりと、かなりタイトな日程だったのです。 そんな中、私が誰を同行しても驚くことのない人々のおかげで、友人たちは日本の信仰を垣間見ることになり、今回彼らはお盆の「送り火」、次の日の法要の「食事会」などを地域の人々と楽しむことができました。これで金沢の評価が上がらないわけがない! 春は桜が綺麗な能登鹿島駅。無人駅で風情がある。世界一長いベンチ、映えスポットがやはりカップルには人気新婚旅行、と聞くと「お邪魔虫になってはいけない」と考えるのが普通なんですが、実は結婚する前から一緒に住んでいるカップルはとても多いのです。人生の転換期で「婚姻」と言う選択をする人、「事実婚」で不便はないから結婚は考えない人、などなど多種多様なライフスタイルがあります。その中で、こうやって金沢に来てくれれば、とても「新婚」でなくても、独創的な旅行が楽しめるし、私もアテンドする甲斐がある、と言うものです。 では、この寒い時期、少しでも心が温まってもらえれば幸いです。 今日のフレーズは、結婚式の乾杯で定番の掛け声です。 ¡Vivan los novios ! (ビバン・ロス・ノビオス!) 「新郎新婦に幸あれ !」 ※ 本コラムで掲載している写真は、当時(2018年)に撮影したものです。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2025/01/15 業界コラム スペインの知られざる文化 No.73 (最終回) 2024/12/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.72 2024/11/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.71 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月