スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。
石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

一月、二月と細切れの積雪に見舞われ、今年の冬も車の発掘に何度となく汗を流し、ようやく春の兆しが見えてきた金沢です。日本を一つ例にとっても、太平洋側か日本海側か、内陸か海沿いか、などによって気候が変わりますが、やはりスペインも同じ。それぞれの住む場所によって、行きたくなってくる場所も違ってきますね。

30年前の新婚旅行、行き先は ?

新婚旅行の話を聞きたくて、たくさんの友達の顔が頭に浮かんだのですが、「話したくない過去の話」になっている場合もあり、ちょっと難航しました。というのも、離婚していて、子供の養育のためだけに連絡を取る人や、別居状態を続けながらも新しい恋人と暮らしている人、同居が長くても結婚していないので「新婚旅行」には行っていない、など、人々のライフスタイルは多岐にわたっています。そんな中、今回質問に答えてくれたのがEさん。いつもこのコラムの執筆のために情報をくれたり、スペイン語の間違いを指摘・説明してくれたりする心強い友達なのですが、彼女に聞いてみました。

Pregunta(プレグンタ=質問)
ねえねえ、Eさんたち、新婚旅行に行ったのは、いつ頃のこと?
Respuesta(レスプエスタ=回答)
1989年の10月22日から11月9日よ。戻ってきた日に、ベルリンの壁の崩壊があったわ。
数多くのアルバムの中から選ばれた一冊。それぞれの写真には几帳面にキャプションが付いている。

P:そうなんだ。あれはすごいニュースだったね。ところで、新婚旅行って、だいたい何日ぐらいがスタンダードなの?

R:そうね、だいたい15日から20日(2、3週間)って感じかな。人にもよるけど。

P:で、Eさんたちは3週間弱、って感じね。結構長い期間の旅行よね。

R:そうね。当時、大体の勤め先は、結婚式と新婚旅行のために、約15日間の休暇をくれたものよ。
ただ、私その時失業中で、彼は大学勤めだから数日の融通はきいたのよ。

P:そうなんだ。じゃあゆっくり旅行を楽しんだのね。ところで、どこに行ってきたの?
やっぱり南の島、ビーチを目指して?

R:当時は、メキシコとか、ドミニカ共和国とかが旅行先として流行していたんだけれど、私たちは、キューバを選んだのよ。

空港での写真に、その国の特色が現れる。着ている服の色であったり、被っている帽子であったり

P:どうして?

R:とっても素敵なところだ、と聞いていたから。で、やっぱり行ってよかったわ。

P:そうなんだ!
それに、休暇が3週間弱あれば、随分のんびりとした旅ができたでしょう?

R:そう。でも、他のカップルのような旅行ではなかったわ。

P:というと?

R:何しろ、私たちは遺跡を巡ったりするのが好きで、ビーチでカクテル飲みながら、のんびりと寝そべって時間を過ごす、という、大半の新婚旅行客とは違ったの。

P:へぇ、じゃあキューバで遺跡巡りを?
キューバといえば、色とりどり原色に塗られた家々の壁とか、そういうイメージなんだけれど。

R:それがね、メキシコのユカタン半島のような、あんな感じの遺跡らしいものっていうのはあんまりなかったのよ(笑)。
そう、人々の生活空間のあの色使いは、素敵だったけれどね。

P:へぇ。じゃあ、写真はたくさん撮ったのよね?

R:そうねぇ、たくさんではないけれど、写真は撮ってきたわ。

P:ねえねえ、何枚か見せてくれない? 私のコラムに掲載させてもらっていいかしら?

R:いいけど、当時はデジタルカメラは主流ではなかったので、写真はアルバムに貼ってあるのよ。
しっかり貼り付けてあるから、スキャンもできないし…。どうやって送ろうか?

ホテルの外観やキューバ名物のグアグアと呼ばれるバス。写真を見て想像するに、かなり色調豊かなようだ。イグアナとサギもアルバムを飾る

P:うわぁ、アルバムね! 見せて見せて!

R:うううん、でもどこにしまったかしら…。

ということで、最近は取材にも旅行にも、ましてそれが国外のスペイン、となると、簡単にはEさんの家に遊びに行けないので、なんとか旅行の雰囲気を伝えてもらうことにしました。

「美保子、もう長いことアルバムは見ていないから、どこにあるのか…。ちょっと時間を頂戴ね。[中略]見つかった! 写真はしっかりとアルバムに貼り付けてあって、やっぱり剥がせないわ。」
「大丈夫。写真の写ったアルバムを、写真に撮ったらどうかな?」 

いつか、彼らの息子さんの話もご紹介したいのですが、何しろEさんご夫婦は時間に追われる日々を過ごしており、急かすなんてとんでもない。その慌ただしい中、時間を割いてくれて、写真が送られてきました!

P:新婚旅行って、自分たちで計画したの? それとも、そういうパックがあるの?

R:キューバもスペイン語だから、言葉に問題ないのはわかっていたけれど、宿泊とか飛行機がパックになった旅行にしたの。何しろ、全てセッティングされているからね。「ハネムーンツアー」といえばわかるかしら?
他のカップルたちと同じ飛行機で行く、あんな感じよ。

P:ああ、私は経験ないけれど、そういうツアーがある、というのは聞いたことあるわね。

R:そうなの。特に「ハネムーン」に特化していたわけではないんだけれど、やっぱりカップルの旅行者が多かったわ。

P:日本で30年前にやっぱり新婚旅行に行かれた方に聞いたんだけれど、日本ではあまり旅先で別のカップルたちと過ごすことはなかったんだって。スペインの人たちはどうなの?

R:食事なんかは大勢の方が楽しいから、夕食を一緒にしたこともあったわ。
偶然旅行中に誕生日、という人もいるわけだから、誕生日を祝う食事だったりね。

P:そうなんだ〜。やっぱり日本とは違うよね。日本以外の食事って、一皿の量が多かったりして、二人きりだとほんの数品しか味わえないものね。パエリャは2人分からしか注文できなかったりして、その上4人家族が食べれるぐらいの量だから、新婚さんが2人で食事すると、パエリャだけでもうお腹いっぱいになるものね。

R:ふふふ。美保子と話すと、いつも食べるものの話が出てくるね。

P:だって、国が変われば、食習慣も変わるじゃない〜。あんな言葉のいらない文化交流って、他にはないもの!

ということで、たくさんのアルバムのページが送られてきたので、それを抜粋してコラージュしてみます。

当時のカメラはデジタルではなく、現像してプリントして初めて結果が目に見えた。そんな中のアルバムの一枚一枚の写真はまさに宝物だ

30年経つと、どんな写真もアルバムも、シミが出てきたり、色あせてきますが、そこが夫婦の歴史なのかな、と思って、彼らの旅行を間接的に楽しんでみました。知らない人の写っているアルバム、って、「知らない人ばかりで面白くない」という言葉も聞いたりしますが、バックに写っている景色であったり、人々の服装であったり、表情であったりを垣間見て、世界はとっても広いんだなぁ、と改めて感じさせられます。

このコラムを読んでいらっしゃる新婚旅行経験者の方々も、たまにはタイムスリップして、「あの頃」の思い出に浸ってみるというのはいかがでしょうか? そして、まだ新婚旅行未経験の方々、妄想新婚旅行を思い描き、しばし脳みそを宇宙遊泳させる、というのはいかがでしょうか? 

現地で調達した洗濯石鹸、空港での歓迎コンサート、現地の方のキャップなどなど、画像の質はイマイチですが、楽しめる

私ですか? 何しろ会社勤めではないので、新婚旅行休暇はいただけないものの…、行きたい場所のリストだけは、長くなる一方です。そんな空想を続けると、いつまでたっても筆が置けなくなってしまうのですが…。

グループでの食事はロブスター料理。他国では高級料理だが、キューバでは廉価なため、歓迎の一品として振舞われるとのこと。街角の人々の様子も違う。旅に出るのは楽しい

今日のフレーズは、
Hay que soñar, ¡señores! (アイ・ケ・ソニャール、セニョーレス!)
「夢みなきゃダメですよ、みなさん!」

空港の看板、カヨラルゴ島(Cayo Largo)のもの。画像は古いので、興味のある方はぜひ検索を!