2021/03/08 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.45 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 スペインへの里帰りが中止になり、かれこれ一年が経ちます。実際の里帰りは2019年の夏だったので、一年半、金沢に引きこもり、という計算になります。 ただ、毎月毎月、昔のことを思い出すが如く、日本とスペインの違いを書き綴って来たので、まるで毎月里帰りをしているような錯覚に陥ります。パソコンに向かえば、心は里帰り、なんて、ある種とっても経済的な自分に、我ながらびっくりです。 あっという間に月日が経ち、気づくと、巷では「定年退職者」と呼ばれるカテゴリーに突入の年齢になって行くのでしょう。あ、まだ還暦、というのも待っているので、そんなに慌てることはないのでしょうが~。 影はまだまだ冬のものだが、日差しは強い。お目当のバルやカフェ、レストランはほぼ休業状態。町のいたるところにあるベンチが憩いの場だ第三の年齢、スペインと日本渡西した時は、大学卒業直後の22歳だったので、「将来」は「拓けるもの」だと思い、そのまま27年をスペインで過ごしてしまったのですが、気づくとなんと、周りの人々はやれ管理職は大変だ、やれ子供の学費は大変だ、と言っているではないですか! ある意味、バルセロナは私にとっての竜宮城だったのですね。 平日だからか、誰もいない遊技場楽しい竜宮城から戻り、「開いてはいけません」と乙姫様に言われた玉手箱を開けたが如く、今度は「お、あの時の『将来』は『拓ける将来』ではなくなり、違う次元の将来が現れ、これから先は違う世界に突入か?」と、一人で身震いをすることになります。新型コロナ感染拡大を防止するための自粛行動によって、どこにも出かけず、誰にも会わず、テレビが友となり、ますます想像力を掻き立てられ、勝手にいろんな妄想に右往左往、という結末になりつつあるのです。 いやいや、なになに、今が第二の人生とするならば、第三の人生も待っているはず! そんなに捨てたもんじゃないはずです。 寒いから? 足元おぼつかないから? 寄り添ってのお散歩。ちょっと歩けば、ベンチに座るたくさんの市民が見えてくるバルセロナの生活を思い起こすと、市場の周りだけではなく、どこを歩いても活気があり、何しろ人がたくさん歩いていました。 老若男女、右足の靴底が地面についてから、やっと左足の靴底が地面から離れるが如く、歩きはのんびりと、そしておしゃべりに興じ、笑いに包まれ…。四年前にご紹介した冬から春にかけての冬のグルメ、ねぎ焼きの記事にも、たくさんの人々が幸せそうに集っていたものです。 コレコレ、しっかり両足を地面につけて歩く。足元には、バルセロナの町のシンボル、花模様?のタイル昔は、なぜこんなにベンチがあるんだろうか、と疑問だったのだが、先見の明とでもいうのか、ソーシャルディスタンスを守るにはぴったりの配置がなされた都市デザインさて、現在、どんな様子でしょうか? 第三の年齢(Tercera edad = テルセラ・エダー)に属するサルバドールに早速訪ねてみました。 と、その前に、この「第三の年齢」と私が訳す言葉について、ちらりと調べてみました。 スペインで受けるニュアンスと、日本での定義が、若干違っていることに驚きながらも、まあ、これが文化の違いというものか、と、さらっと流すことにします。参考のため、以下に書き出しますね。 Tercera edad (スペイン語)= 高齢者(日本語)そして、年齢の定義が書いてありました。 日本では一般的に、0~19歳を未成年者、20~64歳を現役世代、65~74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者とされる。 『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』より URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85 その一方、スペイン語のページには、このテルセラ・エダー(高齢者)の説明として、 前期高齢者(55歳から65歳) 高齢者(65歳以上) 後期高齢者(80歳以上) 『フリー百科事典 ウィキペディアスペイン語版』より URL:https://es.wikipedia.org/wiki/Tercera_edad という説明がされているのです。つまり、日本では64歳までが「現役」と言われているのに対し、スペインでは54歳までが現役という、10年の差が生じてくるのです。そして、80歳以上は厳密には「Cuarta edad=クワルタ・エダー、第四の年齢」となる、とのことのようです。 多分、日本での定義は、社会保険の種類であったり、受給する年金の年齢であったりする感じですが、スペインの高齢の定義と、年金受給年齢とは、必ずしも合致していないのが不思議な感じです。55歳になったからと言って、年金受給の権利は生まれず、やはりなんらかの仕事に携わり、年金受給を目指して働く人々がほとんどで、でも、年齢的には「高齢者」に分類されるのですね。 犬の散歩、スーパーへの買い物は、不要不急には含まれていないので、みながマスク着用で一休み。冬の太陽が嬉しいそれで、バルセロナにいるときには、日本に比べて「お年を召した方」が働いていなかったのでしょうか。現役世代が54歳まで、というと、55歳以降は前線からは引退する、ということになるのでしょうから。 日本なら、さしずめ紫外線防止で日傘をさす人々が多いが、ここバルセロナの人々は好んで太陽を浴びる日本に旅行に来た友人たちからは、日本には定年制度とかは無いの? なんであんなにお年を召した方が働いているの? とよく聞かれたものです。日本では、75歳になっても現役でお仕事をしている方がとてもたくさんいて、それがスペイン人の目には不思議に映ったのです。バルセロナでは定年退職するときが年金受給で、それからは旅行に、趣味に、散歩に、スポーツに、となります。そして日本人から見たらびっくりするでしょうが、「年金受給者(退職者)」というのが「学生」「会社員」「自営業」などと並んで、その人たちの職業になるのです。日本の新聞記事などに「82歳、無職」と見かけることがありますが、スペインで「無職」というカテゴリーはあまり見ない気がするのですが。 緊急事態宣言中の運動不足と、体力低下を防ぐため、歩く歩く。万国共通の思いだ。唯一違うのは、全員マスク着用。長いバルセロナ生活では見なかった風景だスペインの「高齢者」は、精神的にもみんな若々しく、新型コロナの起こる前には、シーズンオフの観光地などは、旅行会社が「高齢者」向きの旅行を企画し、格安・リゾート滞在型の商品が人気だったようです。スペインのバケーションは基本2週間は取るので、高齢になっても、やはり最低でも8日間が主流。早く旅行に行きたくてうずうずしているのは、スペインも日本も同じですね。 そんな中、二月であってもサンサンと太陽が降り注ぐバルセロナ。写真に写る人々はまだまだ冬の様相ですが、このコラムが出る頃にはもっともっと春らしくなっていることでしょう。日本も太平洋側は太陽が降り注ぐのでしょうが、ここ北陸は雪、雷、曇り空の日々です。早く暖かくなって欲しいものです。 ¡Hasta muy pronto! (アスタ・ムイ・プロント! =また近いうちに! の意味) ≪写真協力≫ Salvador Barrau氏 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2025/01/15 業界コラム スペインの知られざる文化 No.73 (最終回) 2024/12/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.72 2024/11/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.71 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月