2021/06/04 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.47 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 新型コロナウィルス問題もとうとう丸一年続き、なかなか先の見えてこないのは日本だけではないようです。ロックダウンが厳しいヨーロッパの国々。スペインも例外ではなく、ステイホームも日常になっているようです。そんな中、徐々に規制が解かれていき少しずつ家族と会うことが可能になって来ているのも事実。厳しいロックダウン中は、同じカタルーニャ州の中の県境だけではなく、町の境界も超えられずたかだか20キロ離れた町に住む親御さんにも会いに行けなかった、とも聞いています。 その点、日本には罰則がないのでかなり自由に旅行できる感じですが、それでも街中の人混みには行きたくない、っていうのが心情でしょうか? オートキャンプも流行し屋外でのアクティビティーに出たくなるのは当然です。でも、東京五輪を前にもう少し自粛しなければ、とも言われています。そんな中、次回スペイン旅行ができるとしたら、街中ではなくちょっと郊外に出てみませんか、というお誘いです。 モンセラット、カタルーニャ地方の聖なる山 その1近くで見ると圧倒されるモンセラットの山並みと、その下の建物モンセラット(またはモンセラート、モンセラ)はMontserratと書きますが、カタルーニャ語でmontは山、serratはノコギリの意味があり、直訳すると「ノコギリ山」となります。バルセロナからほぼ60キロを内陸に向かって行くと、途中からギザギザの山並みがはっきりと見えて来ます。標高1,236メートルの山の720メートル地点に位置する修道院(Monasterio de Montserrat)へは車で行くのがいちばん楽なのですが、電車とアプト式鉄道クレマジェラを乗り継ぐ、鉄道の駅からケーブルカーに乗る、そしてもちろん最寄駅から「徒歩」でも行くことができます。ただ、この場合の「徒歩」は「登山」並みなので、それなりの準備は必要ですね。 高速道路からもよく見える。あのギザギザはなんだろう、という山肌さて、「モンセラットに行く」と一口に言っても単なる景勝地ではないのです。屋内、屋外の美術館あり、修道院あり、フニクラあり、一日滞在しても飽きのこない、美術、文化、自然、スピリチュアルな空間を楽しめる場所なのです。 近くで見ると、ギザギザより、ニョキニョキの方があっている感じ。空想を駆り立てるフォルムにはびっくりモンセラット山に着くとまず圧倒されるのが、その修道院を囲むかのように(山々に隠れるように修道院が作られたのかもしれませんね)ギザギザにそびえ立つ山肌です。遠くから見るとギザギザに見えるものの、近くから見ると意外に山はだはゆるやかにカーブを描き、一つ一つの山がニョキニョキとしていて、「あ、象の鼻みたい」とか「あ、お腹のぽちょっとした人に見える!」などなど、想像力を駆り立てます。標高700メートルあたりから下を見ると、天気が良い日は遠くに町が見え、吹き寄せる風が心地よく、悪天の日は谷が霧でかすんだりして、それはそれなりに神秘的な風景となります。 車で到着した後は、それぞれ山の上と下に向かってフニクラがあるので、登山準備がなくても、自然を楽しめる駐車場から歩くこと約5分で、お土産物を売るショップやレストランがありますが、ここは修道院からの帰りに寄ることにします。1565年に作られた、モンセラットの紋章のついた古い城壁の門を上がって行くと、修道院の広場に着きます。この広場は、1929年にアントニ・ガウディと同時代に活躍した建築家、ジュゼップ・プッチ・イ・カダファルクにより計画されたもので、広場に沿ってモンセラット美術館や1563年に巡礼者のために作られたホテル・アバット・シスネロスの建物などがあります。またここからの展望も素晴らしく、人気の写真スポットです。 修道院構内の広場だというのに車両が入っているのは特別な行事があったためか、昔はのどかだったのか。車の止まっている場所まで進むと、朝日がきれいに昇ってきた。絶景聖堂のファサード。ステンドグラスも素晴らしい室内は暗いため、うまく写真が撮れない。黒いマリア様とキリストの坐像。奥へ進むと聖堂があるのですが、右側の廊下には人が列を作っています。ここが「モンセラットの黒いマリア様」に会いに行くための通路の入り口で、年中いつ行っても人が並んでいない日は皆無なのです。この列に着くと、時間差で少しづつ人が動き出し、聖堂の側面部分を通り、教会内部へと進みます。途中、いろいろな装飾、絵画、彫刻などを見ながら階段を上がって行くと、急に行列の進みが遅くなります。そうです、教会中央祭壇の上部にいる黒いマリア様の正面に立ち、祈りを捧げるのがこの行列についている人々なのです。 マリア坐像の右手は宇宙を象徴する球体を持ち、その膝には子供のキリストを抱いています。キリストの右手は祝福のポーズをとり、左手にはパイナップルを持っています。この約95センチのマリア像の前に立ち、その右手の球体にキスして人々は満足し登ってきた階段の反対を降りて行くので、どうしても渋滞は免れません。様々な苦悩や悲しみを持つ人々が、このマリア像の前で祈りを捧げる様子は日本をはじめ、アジア諸国にある神社仏閣で人々が祈る姿とはちょっと違うけれど、その根底の気持ちはおんなじなのだと気付かされます。 そんな黒いマリア様詣での後、聖堂をぐるっと一周する形で、入り口とは反対側の出口から出ます。そこにはキャンドルを捧げるスペースがあるのですが、大小の色とりどりのケースのついたキャンドルは、売店ではなく自己申告制で払うシステムになっていて、この辺りも参拝に来た、という気持ちになります。 一本だとさみしい感じのキャンドルも、こんなにたくさんの人々の気持ちが集まるっているのを見ると、心も安らかになるというもの参拝を終えると再び広場に戻るのですが、床の大理石、壁の彫刻などに見とれてしまいなかなか先に進みません。この後のモンセラット山の素晴らしさは、来月にまたじっくりとご紹介しようと思います。 ¡Ya os contaré más cosas! (ヤ・オス・コンタレ・マス・コサス! =そのうちまた、いろいろなことをお話ししますよ! の意味) この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2025/01/15 業界コラム スペインの知られざる文化 No.73 (最終回) 2024/12/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.72 2024/11/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.71 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月