2021/07/13 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.48 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 刻一刻と、世界の新コロナ情勢が変化し、今月は東京オリンピックの開幕も予定されていますね。最後の最後まで予断は許さない大きな決断の時。ここは、今月も聖山モンセラットのお話をしながら、安全な五輪開催の実現を神にたのんでみることにしましょう! 先月は、教会特有の静かな祈りの時を過ごし、キャンドルに火を灯し、厳かな気持ちで外に出ました。上を見上げると、真っ青な空、というコントラストも、モンセラットの醍醐味です。年間300日ほどは晴れ、と言うバルセロナの穏やかな気候は、時に水不足や山火事を起こしたりもしますが、お出かけには最高です。10年ほど前、二月にモンセラットに行ったことがあり、その時は道がうっすらと凍っていたり、山肌にツララができていたりで、ノーマルタイヤでの運転に冷や汗をかいたものです。でもそれ以外は、素敵なパノラマに心が洗われる感じがします。 Tot anirà molt bé(すべてとってもうまくいく)と現地の言語カタラン語で書かれたメッセージ。誰が、誰のためを思って書いたものか ?心が和むモンセラット、カタルーニャ地方の聖なる山 その2中庭から聖堂(バシリカ)のファサードを正面に見て右側には、聖母マリア様「モレネータ」の前にアクセスできる廊下の入り口があると先月お伝えしました。(スペインの知られざる文化 No.47)そして、左側が「アヴェ・マリアの道」と呼ばれる、ろうそくの廊下です。屋外であって、屋外ではないような、ちょっと薄暗いこの道には、たくさんのろうそく台が続き、透明、赤、緑などのキャンドルホルダーに入ったろうそくが並びます。日本の寺院では細長いろうそくを使うことが多いのですが、ここはキャンドルホルダーに入った太いろうそくが使われ、燃え尽きるまでかなりの時間がかかるため、次々と火が灯され、たくさん並ぶと、しばし見とれてしまうほどです。 若き日のアントニ・ガウディもこのろうそくのサロンの装飾に携わったというほど、たくさんの有名・無名の人々の心がこもっている一昨年のこの時期、中庭には巨大なアート作品が登場していました。モンセラットには度々訪れていたのですが、その時初めて中庭のオブジェを目にし、「あら、モダンな素材だこと」と驚いたものです。4メートルにも及ぶ、その巨大な作品は、バルセロナのアーティストJaume Plensa(ジャウマ・プレンサ)氏が、「透明な彫刻」というコンセプトで仕上げたステンレス製の顔です。聖堂ファサードを隠さないようにも考えられたこの作品は、伝統と静寂、そして人々の祈りの空間に、新しい感覚を呼び込んでいるようにも感じました。残念ながら、半年間の設置であったため、現在はすでにモンセラットで見られないとのですが、2014年から東京の虎ノ門ヒルズのオバール広場にも同氏の作品があるということで、バルセロナ出身のアーティストに興味のある方は、ぜひ訪れてくださいませ。 大きな作品が鎮座しても、全く威圧感がないほど、このモンセラットの建物は広々として、逆に開放感すら醸し出している時間がいくらあっても見尽くすことができないのが、モンセラットです。もうかれこれ17年ほど前に翻訳を依頼された、モンセラットのガイドブックを久々に手にしましたが、全部で100ページを超えるポケット版の多言語ガイドブック(スペイン語、カタラン語、ロシア語、日本語)、今も現地で販売されているのか、は定かではありませんが、これを手にして山を歩けば、見るものほとんどすべての情報が写真入りで掲載されているので、面白いのかな、と思います。 17年も前のガイドブックとはいえ、屋内、屋外ほとんどすべての作品を網羅しているこのガイドブックは、どうしても捨てることができず、日本に持ち帰った。まさか今になってページを開くことになるとは…さて、荘厳な聖堂部分を離れ、散策の始まりです。老若男女がこの聖山を満喫できるのは、フニクラのおかげと言っても過言ではありません。何しろ頂上は1,236メートル。決して「丘」ではありません。サン・ジョアン(Sant Joan)のフニクラを使えば、海抜1,000メートルまで6分しかかからず、あっという間に連れて行ってもらえるのです。ここからの眺めはもちろん、フニクラ駅建物の上階では、モンセラットの歴史、動植物といった自然、気候などを紹介したパネルインフォメーションが楽しめます。まるで子供のように、すれ違う上りの対向のフニクラを撮影していたようです。 ラッキーなことにがら空きの車内を写せた。高いところがあまり得意でない筆者だが、ちょうど真ん中、3分あたりで見られるすれ違いシーンを子供のように喜んでしまったフニクラを降りると、さっきの修道院周辺の景色に比べ開放感が増します。好天でも風が強かったりする日の経験があります。夏でも軽く羽織るものを持っていくのが良いでしょう。パノラマだけを楽しむならば、フニクラ駅の上階テラスでも十分ですが、もうちょっと踏み込んで見ましょう。足元にさえ注意すれば、よほどのことがない限り落っこちることはないでしょう。 海抜1,000メートルからの景色。6月の気候はすでに暑く、山と谷を抜ける風が心地よい遠足にはやはり、おにぎりにお茶実は、2013年4月にも訪れていて、この時はもう少し頂上近くまで歩行きました。ちょうどスペインの巡礼の道を歩く計画の前で、足慣らしも兼ね、シューズの調整がてらお弁当持参でのハイキングです。 修道院からは見えなかった山の上には、まだまだ道が続き、驚くことにいくつもの古いエルミータ(Ermita=隠者のいおり、人里離れた礼拝堂)があるのです。そこにたどり着くにはかなり細い道を山肌に沿って歩かねばならなかったりするので、昔日の巡礼者、修験者たちの厳しい生活が想像できるというものです。近年の技術のおかげで、ここ1,000メートルまで苦労せず到達できるようになりました。トレッキングシューズなる安全な靴も存在し、防寒具も、お水を入れる軽いペットボトルもあり、快適な「ハイキング」となったわけですが、当時このエルミータに祈りを捧げに来た人たちは、見るには綺麗だけれど、登るには厳しいこの山をどんなことを考えながら歩いたのでしょうか? 山肌を削ったような道が続く。柵があるとはいえ、ちょっと寒々するインフォメーションパネルが複数設置されていて、近隣の地形や建物を説明してくれる山のいたるところに礼拝堂がある¡Deseo el éxito de los Juegos Olímpicos de Tokio 2020! (デセオ・エル・エキシト・デ・ロス・フエゴス・オリンピコス・デ・トキオ・ドスミル・ベインテ! =東京2020オリンピックの成功をお祈りします!) の意味 様々な山肌。人に見えたり、動物に見えたり。想像力を駆り立てる この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2025/01/15 業界コラム スペインの知られざる文化 No.73 (最終回) 2024/12/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.72 2024/11/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.71 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月