スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在 27 年を経て、2015 年に帰国...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在 27 年を経て、2015 年に帰国。
金沢市の北國外国語カレッジを中心に、スペインの生活とスペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでつながりながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとして、ますます活動の幅を広げていくべく、挑戦中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

刻一刻と、世界の新コロナ情勢が変化し、今月は東京オリンピックの開幕も予定されていますね。最後の最後まで予断は許さない大きな決断の時。ここは、今月も聖山モンセラットのお話をしながら、安全な五輪開催の実現を神にたのんでみることにしましょう!

先月は、教会特有の静かな祈りの時を過ごし、キャンドルに火を灯し、厳かな気持ちで外に出ました。上を見上げると、真っ青な空、というコントラストも、モンセラットの醍醐味です。年間300日ほどは晴れ、と言うバルセロナの穏やかな気候は、時に水不足や山火事を起こしたりもしますが、お出かけには最高です。10年ほど前、二月にモンセラットに行ったことがあり、その時は道がうっすらと凍っていたり、山肌にツララができていたりで、ノーマルタイヤでの運転に冷や汗をかいたものです。でもそれ以外は、素敵なパノラマに心が洗われる感じがします。

Tot anirà molt bé(すべてとってもうまくいく)と現地の言語カタラン語で書かれたメッセージ。誰が、誰のためを思って書いたものか ?心が和む

モンセラット、カタルーニャ地方の聖なる山 その2

中庭から聖堂(バシリカ)のファサードを正面に見て右側には、聖母マリア様「モレネータ」の前にアクセスできる廊下の入り口があると先月お伝えしました。(スペインの知られざる文化 No.47)そして、左側が「アヴェ・マリアの道」と呼ばれる、ろうそくの廊下です。屋外であって、屋外ではないような、ちょっと薄暗いこの道には、たくさんのろうそく台が続き、透明、赤、緑などのキャンドルホルダーに入ったろうそくが並びます。日本の寺院では細長いろうそくを使うことが多いのですが、ここはキャンドルホルダーに入った太いろうそくが使われ、燃え尽きるまでかなりの時間がかかるため、次々と火が灯され、たくさん並ぶと、しばし見とれてしまうほどです。

若き日のアントニ・ガウディもこのろうそくのサロンの装飾に携わったというほど、たくさんの有名・無名の人々の心がこもっている

一昨年のこの時期、中庭には巨大なアート作品が登場していました。モンセラットには度々訪れていたのですが、その時初めて中庭のオブジェを目にし、「あら、モダンな素材だこと」と驚いたものです。4メートルにも及ぶ、その巨大な作品は、バルセロナのアーティストJaume Plensa(ジャウマ・プレンサ)氏が、「透明な彫刻」というコンセプトで仕上げたステンレス製の顔です。聖堂ファサードを隠さないようにも考えられたこの作品は、伝統と静寂、そして人々の祈りの空間に、新しい感覚を呼び込んでいるようにも感じました。残念ながら、半年間の設置であったため、現在はすでにモンセラットで見られないとのですが、2014年から東京の虎ノ門ヒルズのオバール広場にも同氏の作品があるということで、バルセロナ出身のアーティストに興味のある方は、ぜひ訪れてくださいませ。

大きな作品が鎮座しても、全く威圧感がないほど、このモンセラットの建物は広々として、逆に開放感すら醸し出している

時間がいくらあっても見尽くすことができないのが、モンセラットです。もうかれこれ17年ほど前に翻訳を依頼された、モンセラットのガイドブックを久々に手にしましたが、全部で100ページを超えるポケット版の多言語ガイドブック(スペイン語、カタラン語、ロシア語、日本語)、今も現地で販売されているのか、は定かではありませんが、これを手にして山を歩けば、見るものほとんどすべての情報が写真入りで掲載されているので、面白いのかな、と思います。

17年も前のガイドブックとはいえ、屋内、屋外ほとんどすべての作品を網羅しているこのガイドブックは、どうしても捨てることができず、日本に持ち帰った。まさか今になってページを開くことになるとは…

さて、荘厳な聖堂部分を離れ、散策の始まりです。老若男女がこの聖山を満喫できるのは、フニクラのおかげと言っても過言ではありません。何しろ頂上は1,236メートル。決して「丘」ではありません。サン・ジョアン(Sant Joan)のフニクラを使えば、海抜1,000メートルまで6分しかかからず、あっという間に連れて行ってもらえるのです。ここからの眺めはもちろん、フニクラ駅建物の上階では、モンセラットの歴史、動植物といった自然、気候などを紹介したパネルインフォメーションが楽しめます。まるで子供のように、すれ違う上りの対向のフニクラを撮影していたようです。

ラッキーなことにがら空きの車内を写せた。高いところがあまり得意でない筆者だが、ちょうど真ん中、3分あたりで見られるすれ違いシーンを子供のように喜んでしまった

フニクラを降りると、さっきの修道院周辺の景色に比べ開放感が増します。好天でも風が強かったりする日の経験があります。夏でも軽く羽織るものを持っていくのが良いでしょう。パノラマだけを楽しむならば、フニクラ駅の上階テラスでも十分ですが、もうちょっと踏み込んで見ましょう。足元にさえ注意すれば、よほどのことがない限り落っこちることはないでしょう。

海抜1,000メートルからの景色。6月の気候はすでに暑く、山と谷を抜ける風が心地よい
遠足にはやはり、おにぎりにお茶

実は、2013年4月にも訪れていて、この時はもう少し頂上近くまで歩行きました。ちょうどスペインの巡礼の道を歩く計画の前で、足慣らしも兼ね、シューズの調整がてらお弁当持参でのハイキングです。

修道院からは見えなかった山の上には、まだまだ道が続き、驚くことにいくつもの古いエルミータ(Ermita=隠者のいおり、人里離れた礼拝堂)があるのです。そこにたどり着くにはかなり細い道を山肌に沿って歩かねばならなかったりするので、昔日の巡礼者、修験者たちの厳しい生活が想像できるというものです。近年の技術のおかげで、ここ1,000メートルまで苦労せず到達できるようになりました。トレッキングシューズなる安全な靴も存在し、防寒具も、お水を入れる軽いペットボトルもあり、快適な「ハイキング」となったわけですが、当時このエルミータに祈りを捧げに来た人たちは、見るには綺麗だけれど、登るには厳しいこの山をどんなことを考えながら歩いたのでしょうか?

山肌を削ったような道が続く。柵があるとはいえ、ちょっと寒々する
インフォメーションパネルが複数設置されていて、近隣の地形や建物を説明してくれる
山のいたるところに礼拝堂がある

¡Deseo el éxito de los Juegos Olímpicos de Tokio 2020!
(デセオ・エル・エキシト・デ・ロス・フエゴス・オリンピコス・デ・トキオ・ドスミル・ベインテ! =東京2020オリンピックの成功をお祈りします!)
の意味

様々な山肌。人に見えたり、動物に見えたり。想像力を駆り立てる