2018/07/03 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.15 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 金沢は 7 月にお盆となり、お墓の前には「キリコ」というものがぶら下げられます。箱キリコと言われるものは、木でお家の形を作り、屋根があり、白い紙を貼った 4 面の正面には「南無妙法蓮華経」もしくは「南無阿弥陀仏」と宗派により違った題目、念仏が書かれています。内部には釘が一本取り付けてあり、ろうそくが一本取り付けられるようになっていて、屋根の部分には細い針金がついているので、つり下げることができるのです。スーパーやホームセンターにも並ぶので、それを持参でお墓参りという方もいらっしゃれば、前もってお寺さんにお願いし名前を入れてもらい、お墓参りの当日受け取る方もいらっしゃいます。 ちょっと違う、冠婚葬祭事情全国的には珍しいらしいが金沢では昔からあるキリコ、側面に名前が書かれる送り火の日、キリコの中にはろうそくが立てられ、 一本一本に火がつけられるさて、石川県の人口は 110 万を超えます。そして金沢市の人口が 46 万 5 千人ほど。ほぼ県内人口の半分近くが金沢に集中していることになります。そして、お盆ですが、金沢市内中心部以外は 8 月がお盆となり、そこでまたお墓参りとなるのです。金沢市に住んでいるから、金沢市内にお墓がある、とは限らず、市内に住んでいてもお墓が市外にある場合は、日本の一般的なお盆休み、8 月中旬にお墓参りです。 そして、7 月同様、8 月も 16 日には送り火としてお墓に吊られたキリコに火が灯され、お寺の上人さまがお経をあげてくださるわけです。 キリコは数が多いので、火を入れるのはまだ明るい うちから。ろうそくの燃焼時間との競争7 月になると、お墓の前には棒が立てられ、その棒にロープが張られていきます。お参りの人が集中するのは 13~15 日なのですが、県外の人、お休みが取れない人はその前の週末にみえるので、みなさんキリコを吊るして帰られます。最近は板状の「板キリコ」も見かけます。何れにしてもキリコには献灯された人のお名前が入るので、誰がお墓参りに来たかは一目瞭然。懐かしい名前を見かけ、元気なんだな、と安心する。そんな役目も果たしているのでしょうか? そんな夏の日本のお盆も近くなり、では、キリスト教のスペインはどうなんだろう、いつお墓参りするんだろう、と気になりませんか? 今日はスペインの葬祭についてお話ししましょう。 日本とは季節が変わり、スペインのお盆は秋です。宗教が関連しているとはいえ、日本同様地域性があり、10 月 31 日、11 月 1 日、11 月 2 日の間に行われます。11 月 1 日が「(諸聖人の日)すべての聖人の日」に当たり、その前後に家族での行事があります。 お墓まいりに行くのもこの時期です。スペインのお墓事情はほとんどが土葬ですが、都市部のお墓は土地の不足などがあり、アパート形式になっているものが多く、最近では火葬が増えています。長年スペインにいて、墓地にも何度か行っているのですが、あいにく画像が乏しく、うまくお伝えできませんが、ヨーロッパ映画に出てくる、門があり、中に入ると糸杉がある、あの霊園を想像していただければと思います。家族のお墓を訪れ、掃除をし、お花を手向けるのは、万国共通です。 モンジュイクの丘には霊園がある。アパートのように墓地が続く日本と全然違うのは、都市部においてのお通夜、お葬式へ行く時の服装です。新聞におくやみ欄があり、案内が掲載されるのも日本と同じです。ただ、お葬式のミサが行われるのはお葬式の日で、お通夜の日は近しい友達や親族が駆けつけ、故人に手を合わせ、残された家族と共に故人を偲ぶものになっています。日本では、お通夜に駆けつける場合、喪服でなくても良い、とされていましたが、最近は次の日の昼間のお葬式に出られない方が多く、実際にはお通夜がメインとなっている、と聞きました。日本を離れた 27 年の間に、いろいろなことが変わっていたのにはびっくりしました。 スペインで行われる一般人のお通夜では、取るものもとりあえず駆けつける、ということで、普段着で構わないのですが、次の日に行われるお葬式のミサも、特に色の指定もアクセサリーの指定も、服の指定もありません。それぞれが故人とそのご家族に失礼に当たらない服装で参列するため、日本のお葬式のような「しめやかな黒」での儀式にはならないのが一般庶民の葬儀です。27 年の間に、仕事関係、友人関係含めてたくさんのお葬式に参列しましたが、服装だけを見ると、一種、パーティーのようでもあり、また人々の表情は、同窓会のようでもあり、時には故人の思い出話で涙を流しながら笑ったり、という会合になるのが常のようです。「次に再開する時には、ぜひおめでたい時が良いわね」と挨拶するほど、離れたところに住んでいる親族や、昔からの友人たちが集まる機会が減っているのが都会での忙しい生活なのかもしれません。 墓地上層部分にはハシゴで登る。奥行きが見えにくいが、それぞれのお墓にひつぎがおさめられている また、スペインで行われているのを見たことのないもの、それが、お香典とそのお返しです。バルセロナ市には、東西南北にそれぞれ葬儀場があり、ほとんどが住んでいる地域によって振り分けられます。また、火葬かどうかも葬儀場を選ぶ場合の目安となります。全ての葬儀場に火葬場があるわけではないのです。ただ、花輪は友人たち、同僚たち合同で送ることが多く、故人を送りだす時には、素敵なお花と共に、というのも万国共通です。 最近の日本のお葬式同様、宗教的なミサ、故人の好きだった音楽を聴きながらの会、友人たちのお別れの言葉がメインの式、または近しい人だけでの密葬、などなど、ひとつひとつのお葬式には個性が出ます。別れの言葉も同じ。 いかに言葉が違うと言っても、故人への言葉はただひとつ。 「安らかにお休みください = Descanse en paz = デスカンセ・エン・パス」 夏が近づき、日本ではお盆のお墓参り、鎮魂の花火大会の季節になってきました。明るい太陽の国、と言われるスペインですが、やはり日々の営みの中、人々は亡くなっていくのです。ちょっとしんみりしてしまいましたが、こうやって今は会えなくなってしまった人たちのことをちょっとだけでも思い出してみませんか? それが、日本にいても、スペインにいても、何よりのご供養となりましょう。 ¡Nos veremos el próximo mes! (ノス ベレモス エル プロキシモ メス) 来月、お会いしましょう! という意味。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2025/01/15 業界コラム スペインの知られざる文化 No.73 (最終回) 2024/12/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.72 2024/11/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.71 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月