スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。
石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

12月ですね。先月から寒さが厳しくなり、でも11月の半ば過ぎにはスタッドレスタイヤに交換済みなので、いつ雪が降っても大丈夫。とは言え、何年経っても雪道は苦手です。バルセロナでは、内陸北部の雪の降る地域とは違い、通年ノーマルタイヤ。金沢に戻り、初めてのタイヤ交換をしました。「ねえ、お父さん、タイヤはどこで替えてもらうの?」と尋ねると、「そんなもんは自分ですればいいんだ。教えてやる」と言われ、それから春と初冬、年二回はタイヤの交換です。最初は普通車、その後軽自動車になり、交換はかなり楽になりました。そして去年はトルクレンチを購入。雪の降る地方だからこそ、の経験です。

日本で走っている車を見ると、友達が驚く

必ず友達が写真を撮っていくものに、日本のトイレがある、と以前のコラムでご紹介しました。金沢では兼六園や金沢城公園でも写真を撮りまくり日本の文化に感動し、先月お話ししたドアバイザーに首を傾げ、信号のない道を渡る時には「右左右」ではなく「左右左」と確認するのでなかなか渡れなかったり、かなり刺激的な旅行を楽しむのです。そしてやっぱり必ず写すのが、「ボックス型の自家用車」です。特に、色とりどりの四角い軽自動車とすれ違うたびに、パシパシ。

道の両端が駐車スペースとして利用できる
ボティの色はおとなし目。 パステルカラーはあまり見かけず、意外に地味

基本的に、スペインでは「軽自動車」というカテゴリーはないのですが、原付免許で乗れる50ccの小さな車も存在します。ただ、制限速度が時速45キロと決められているのと、価格も200万円近くなので、それならば普通の自動車が便利なのかな、と思うスペイン人が多いのか、そんな小さな車を街中で見ることはほぼありませんでした。

そういう「スペイン人の目」で日本の道路や駐車場で車を眺めると、「ん?」という疑問がもう一つ浮かびました。そう。日本の車は5ドアがほとんど、という事実。
スペインでは、3ドアの車が多く、後ろの座席に乗り込む時には、前のドアを開けて、運転席と助手席のシートを倒して後ろに乗り込む形がかなりポピュラーである、ということに気づいたのです。

みなさんもご存知のように、筆者がスペイン取材に出かけられなくなり、一年以上が経ちます。まさかこんなに長い間、古巣に戻れなくなるとは思わず、だんだん画像のアーカイブも底をついてきました。日常の何気ないことを写真に収める、というのがいかに難しいかを実感した今日この頃。過去のコラムに使用した写真の多くが、サルバドールという、俳句をこよなく愛する友達のもの、というのはみなさんご存知と思いますが、今回は、「美々ちゃん」という日本大好き、着物大好き、茶道愛する、そして合気道を嗜む友達と、そのご主人にSOS。

グリーンの枠内は、基本地域住民の駐車スペース

スペイン時間お昼前に電話で長々話し、「お願い」したら、その後1時間もしない間にたくさんの写真が届きました。居住地がバルセロナ郊外ということもあり、かなりゆったりと駐車されていますが、かなりの確率で3ドアが見られますね。

バルセロナ郊外の街は、スペースに余裕があるため、縦列駐車は少ない感じ。停まっている車はセダンが多い感じ

バルセロナは金沢とは違い、街中の駐車スペースはかなり限られます。地下駐車場のある建物は、最近の建築物で、1900年あたりの建物にはエレベーターはおろか、地下駐車場すらないものもあります。じゃあ、みんなどこに駐車するのか、という疑問も出てきますよね? まず、車の購入に車庫証明が不要、ということ、これも日本人には驚きですよね?

残念ながら、可愛いボックスカーは見当たらない

では、どこに車を停めておくか? 実は、道の左右に駐車スペースが用意されているのです。それぞれの街によって決まりは違ってくるのですが、バルセロナの場合は、それぞれの地区の道幅に余裕のある道路の両側には、青と緑の塗料で駐車スペースが作られ、100メートルほどの間隔で「駐車券発券機」が設置されています。緑は主に、地域住民で許可証を取得した人が駐車できます。

青は地域住民以外も駐車できます。私は2015年まで居住し、車を所有していたのですが、当時、各地区の住民の所有する車両は、それぞれ指定された緑枠の駐車スペースに格安で駐車できました。11番とか13番とか地域ごとにナンバーが付き、各地域の車の所有者にもそのナンバーのついたステッカーとカードが発行されていました。車にはステッカーを。オーナーはカードを持つことによって、駐車券発券機からチケットを印刷し、車内部のダッシュボードなど目につくところにそのチケットを置いておけばよかったのです。基本土日は無料で駐車でき、チケットは1週間もしくは1ヶ月で発行されたと記憶しています。確か1週間駐車して、日本円換算で300円ほどでした。

緑の駐車スペースの標識。ちゃんとお金払って停めて、という言葉:コントロールチケットの発行は「義務です」 という表示も。駐車違反キップを切るお巡りさんも巡回している

その五年後、どうなっているのか調べたところ、2020年には車の燃料によって料金が変わる、というシステムになっていました。エコカー、排気ゼロなどは無料もしくは格安に。従来のディーゼル車やガソリン車などは駐車料金が上がってきています。

問題は、地域住民の所有している自家用車の数と、駐車スペースが同じではない、ということ。つまり、その日に空いているスペースに住民たちが駐車するため、決まった場所に必ず駐車できる、という確証は皆無なわけです。まして、週末や祝日は無料、とくれば、親戚を訪ねてきて駐車する、という車も出てくるわけで、ますます駐車スペースは少なくなっていきます。朝出勤の時に出て行った空のスペースに駐車できれば、その出て行った車が帰宅した時には、地域内の他の駐車スペースを探してウロウロウロウロと何回も道を探し回らなければならない、という不便さも出てきます。でも、一日60円で駐車できるのならば…、ちょっとぐらい家から遠くても、停められるだけでラッキー、と考える住人が大半です。
そういう駐車スペースを探す時間と労力が無駄、と思う住人たちは、新しい建物の地下駐車場を購入または賃貸で借りることになるわけです。金沢では、マンション・アパートならば特定の駐車場が家を借りる時についていたり、格安で借りられたりするところが多いですし、自宅前に数台分の駐車スペースのある一戸建てがたくさんあります。また、ほとんどの商業施設には駐車場があるのであまりピンとこない話ですね。そういうことを考えると、スペイン人が金沢に来て、車事情に疑問を持つのも不思議ではないですよね。そして、縦列駐車ができないと、なかなか利用できないバルセロナの駐車スペース…。いつかみなさんがスペインを訪れる時があれば、やはりあの車の前後がギリギリな駐車スペースにきっと驚くことでしょう(その時のコラムはこちら)。
その日を楽しみに、もう少しスペイン語を覚えてくださいね !

さて、今年も師走。クリスマスと新年のご挨拶を書きますね。

今日のフレーズは、
¡Feliz Navidad! (フェリス・ナビダー)
「メリークリスマス!」
¡Buen Año Nuevo!(ブエン・アーニョ・ヌエボ)
「良い新年を!」

≪ 写真協力 ≫
Miriam “美々” Mantolan 氏
Isaac Lázaro 氏